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山田太一ドラマ「五年目のひとり」の渡辺謙は、哀しき鬼神に見えました。


私が敬愛する脚本家の山田太一が新作を発表したと知ったので、さっそく楽天SHOWTIMEで鑑賞しました。

山田太一の新作ドラマのタイトルは「五年目のひとり」。主演は、山田太一ドラマの常連となった渡辺謙です。

「五年目のひとり」の公式サイトはこちら

結論から申し上げますと、ドラマ史に必ずや残る名作です。少し大げさに聞こえるかもしれませんが、日本人として生まれてきた以上は、絶対に見ておくべきドラマだと言えます。

2011年3月11日の大震災で家族の全員を失った50代の男性を渡辺謙は、物の見事に演じきっていました。

山田太一ドラマに多数出演している渡辺謙ですが、ひょっとすると、渡辺謙という役者は、山田太一ドラマに登場する人物を演じるのは、得意ではない、いえ、むしろ苦手であるような気がするのですね。

決して勇ましいわけではなく、繊細で、複雑に屈折していて、肉体的な強さやスケールがむしろ邪魔になるくらい、情けないところがある、弱くて、いかにも日本人らしいウエットで弱い中年男性役が、世界的な男優である渡辺謙に、常識的に考えても合うはずがないのです。

ところが、渡辺謙が出演した山田太一ドラマはすべて見てきていますが、どの作品も、違和感なく鑑賞できました。

理由はひとつ。渡辺謙が、その役を完全にわがものにして演じきっているからです。自分には合っていないかもしれない、らしくないかもしれない役にも、渡辺謙は不思議と同化してしまいます。

渡辺謙が主演した山田太一ドラマについて、こちらで感想を書きました⇒渡辺謙が主演した「星ひとつの夜」

今回の「五年目のひとり」は、これまでで最高の演技だったとさえ感じました。

体全身から蒼白い炎を燃え立たせて立っている、哀しき鬼神とさえ見えたほどです。

確かに、蒼白き炎が見えた気がしました。

才能のある1人の俳優が、全力を尽くして1つの役を演じたことで、その役人物に神が乗り移ったというべきでしょうか。

ひょっとすると、震災で亡くなられた人々の霊があらわれたのかもしれません。

それにしても、渡辺謙の演技はすばらしかった。これほどの役者の全身全霊の演技を、ほぼリアルタイムで見られたのは幸運でした。

他の山田太一ドラマにも共通するのですが、見終ったあとに、必ず「もっと、真剣に生きないといけない」と自分自身を叱咤激励したくなるのです。

この「五年目のひとり」も、またそうでした。

非常に哀しく切ない物語だけれども、明日も、胸をはって生きてみようと思わせてくれる、前向きなパワーがもらえます。

その意味から、1人でも多くの人に、この山田太一ドラマ「五年目のひとり」を見ていただきたいと思うのです。


最後に、渡辺謙と山田太一のコメントを引用しておきます。引用元は、オリコンスタイル

以下は渡辺謙のコメント。

「山田太一先生の作品には一も二もなく参加させていただくのが、ここ数年の私の通例となっていますが、今回、山田先生から“震災で心に傷を負った孤独な男”を書きたいとお話をいただいたときは、背中に一本“ピン”と張るものがありました」

「「ダイレクトに震災を描くのではなく、1人の男の心の裏側から起きてしまったことの大きさがあぶりだされる脚本。こんなことができるドラマって、なんてすごいのだろう。ドラマの力を脚本から感じました」

以下は、山田太一のコメント。

「震災の被害に遭っていない方たちにも自分のこととしてこのドラマを見てもらうために、エンターテイメントな味わいを加えようと思い、一滴だけですが現実から離れた設定を、謙さん演じる男と少女との関係に書き込みました。そのことで男に起こる心の波立ちは普通じゃない。冷静ではいられないことが、男が回復していないことを物語るのですが、ドラマをご覧の方には、自分だったらどんな反応をするだろうと比べてもらい、少しでも皆さんに近い物語として感じてもらえればいいなと思いました」

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