結論から申しますと「危機一発ききいっぱつ)」は日本語としては誤りで「危機一髪」が日本語の使い方として正しいのです。

 

では、どうして「危機一発」と間違って使ってしまうのでしょうか?

 

「危機一発」という使い方が広まってしまったのには、理由があります。

 

映画のタイトルとして「危機一発」が使われたことがあるため。

 

1964年4月25日に日本で公開された映画に「007危機一発」があります。この邦題を考案したのは映画評論家として有名な水野晴郎だととか。

 

髪の毛一本の僅差で生じる危機的状況を意味する「危機一髪」と銃弾「一発」をかけた一種の洒落なのですね。

 

他にも「危機一髪」という言葉はタイトルに使用されています。1956年の東映映画に「御存じ快傑黒頭巾危機一発」があり、ゲーム・玩具にも「黒ひげ危機一発」「ピカチュウ 危機一発」があります。

 

「007危機一発」の原題は「From Russia with Love」。『007』シリーズ映画の第2作。原作はイアン・フレミングの小説『007』シリーズ第5作。

 

1972年のリバイバル公開時には、タイトルを小説の題名に近い「007 ロシアより愛をこめて」に変更されました。

 

ちなみに水野晴郎が日本語タイトルをつけた映画は、以下のとおり。

 

 

ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!
史上最大の作戦
真夜中のカーボーイ
夕陽のガンマン
007/危機一発
女王陛下の007
夜の大捜査線
チキ・チキ・バン・バン
華麗なる賭け
眼下の敵
卒業

 

 

実に、うまいですね。センスの良さを感じますし、日本語の面白さが生き生きと伝わってきますね。

 

ところで、「危機一髪」の意味を辞書で確認しておきましょう。

 

新明解四字熟語辞典は「危機一髪」を以下のように説明しています。

 

 

きき-いっぱつ【危機一髪】

 

ひとつ間違えば、非常な危険に陥ろうとする瀬戸際。髪の毛一本ほどのわずかな違いで、危険や困難に陥るかどうかの、きわめて危ない瀬戸際をいう。▽「危機」は非常に危ない状態。「一髪」は一本の髪の毛。

 

 

いかがでしょうか。

 

「危機一発」は日本語としては正しくないのですが、危険な状況が感覚的にダイレクトに伝わってくる面白い言葉だとは思います。いつかこの誤用も、容認される時が来るのでしょうか。