なでしこジャパンロンドン五輪への出場が決定しましたね。もちろん、テレビ放送は全試合フルタイム見ていますが、FIFA女子ワールドカップドイツ2011(ドイツW杯)で活躍した同じチームとは思えないほど、苦戦の連続でした。

思うに、あのドイツW杯での感動をもう一度期待するほうが、無理なのかもしれません。なぜなら、なでしこジャパンのW杯優勝は、長い日本スポーツ史をひも解いても、おそらくは東京オリンピックで「東洋の魔女」と恐れられた日本女子バレーボールチームが優勝したのと同じくらいの大事件なのだから。

そうした大きな感動を、何度も期待されては、なでしこジャパンのメンバーが気の毒と言うべきかもしれません。

と言いつつも、まだまだ応援してゆきたいので……ロンドン五輪予選はあと1試合残っていますが、これまでのなでしこジャパンの戦いを振り返ってみたいと思います。

もともと快勝の連続など、期待はしていません。しかし、試合内容が悪すぎますね。

苦戦の原因は、以下のことが考えられます。

1)W杯後にマスコミからの取材攻勢などがあり、多忙を極めていて疲れがとれなかった。

2)疲労のためにコンディションが悪く、試合での運動量が減り、体のキレも悪くなった。

3)ドイツW杯での優勝で達成感があり、五輪へ向けてのモチベーションが今一つ高まらなかった。

4)他チームがなでしこジャパンを徹底的に研究してきて、良さを消されてしまった。

5)グラウンドコンディションが悪く、得意とするパスサッカーが展開できなかった。

その他には、メンタル面での変化も大きかったと思います。これまでは、世間から大した注目もされず、ある意味、気楽に思い切って戦えたのですが、W杯優勝で環境が激変。無欲の勝利から、今度は勝利への責任を負わされた、そのプレッシャーも大きかったのではないでしょうか。

正直、試合そのものは、夢中になって見られるほどの魅力はありませんでした。

得られたのは、五輪の出場権と、「よい準備をしなければ痛い目にあうという教訓」だけ。

ドイツでの輝きは、完全に消えていました。

雑草集団ならではの「ハングリーさ」も「ひたむきさ」も影をひそめ、受け身にまわった試合展開は、王者の風格も感じられません。

また、なでしこジャパンが世界の度肝をぬいた、あの華麗なパスサッカーも見られず、ストレスがたまるばかりです。

もちろん、ロンドン五輪までには時間もあり、本番のピッチコンディションは良いので、なでしこジャパンは活躍してくれるでしょう。

しかし、このままだと、良くてベスト8くらいなのではと、期待を下方修正せざるをえません。

選手の平均年齢も高くて、若手の有望選手が育っているのかも不安です。

五輪で優勝してほしいという気持ちはもちろんありますが、それよりも「なでしこジャッパンらしいサッカー」を徹底的に展開してもらいたい。

私たちが、なでしこに感動したのは、雑草のような「たくましさ」と「潔さ」でした。日本人が忘れていた「ひさむきさ」と「さわやかさ」が、なでしこにはありました。

王者になった以上は、もう一度ハングリーには戻れないかもしれません。ならば、バルセロナ風パスサッカー、いや、日本人にしかできないサッカーの完成を目指すべきだと思います。

バルセロナのポゼッションサッカーの基本にあるのは、高い個人技はもちろんですが、選手たちの個々の運動量をベースにした激しいプレスがあります。

ボールをとられたら、すぐに奪い返し、ボールを持ったら、なかなかとられないポゼッションサッカーは、選手の動きの質と量が求められるのです。

なでしこジャパンが華麗さを取り戻すには、良いグランドで試合することではなく、相手に決して走り負けないこと、つまり運度量を増やせる体力の強化が求められているのです。

周囲の関係者たちは、金銭的な援助だけでなく、人材育成を含めた長期的プランを今すぐ作成すべきです。そうしないと、なでしこジャパンブームはまたたく間に去り、ファン離れの危機が訪れるのは、そう遠いことではないでしょう。

栄光の後には長い低迷期が続くという、日本のスポーツ界の悪しき伝統は断ち切ってほしいのです。