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映画「長崎の鐘」でしか聴けない、藤山一郎の魂から血が噴き出るような絶唱。


今回は日本の名作映画をご紹介しましょう。

大庭秀雄監督の「長崎の鐘」です。

感動を呼ぶ、永井隆博士の前向きで献身的な生き様

「長崎の鐘」は、1950年(昭和25年)9月23日に公開されました。松竹製作・配給。モノクロ、スタンダード、94分。
戦後、日本人によって原爆をテーマにした初の劇映画です。

「長崎の鐘」とは、廃墟となった浦上天主堂の煉瓦の中から、壊れずに掘り出された鐘のこと。

映画は永井隆が執筆した随筆「長崎の鐘」が元になっています。

長崎の鐘 [永井隆]

この随筆は、長崎医科大学(現長崎大学医学部)助教授だった永井隆が原爆爆心地に近い同大学で被爆した時の状況と、右側頭動脈切断の重症を負いながら被爆者の救護活動に当たる様を記録したもの。

1949年(昭和24年)1月、日比谷出版社から出版され、紙不足の当時としては空前のベストセラーとなりました。

映画「長崎の鐘」の主人公は永井隆。若原雅夫が演じています。妻役は月丘夢路

1950年代は日本映画の全盛期で、数多くの名作がこの時期に生み出されています。

この「長崎の鐘」は映画作品として傑作とは言えないかもしれませんが、純度が実に高く、感動できる作品であることは間違いありません。

この映画が名作として高く評価されていない理由の一つに、製作された時の特殊な事情が影響しています。

1950年といえば、まだGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)による厳しい言論統制(検閲)が行われていた不幸な時期です。

「長崎の鐘」に反戦色が濃くない、表現に今一つ社会的な踏み込みが浅い、原爆のリアリティが薄い(生々しい描写がない)ことは、GHQによる検閲の影響があるのは容易に想像できます。

この映画で最も感動できるのは、主人公である永井隆博士の真っ直ぐな生き様です。永井隆博士の前向きな姿勢、献身的な行動、人への愛情に、未来への希望と勇気、「なぐさめ」と「はげまし」をもらえます。

そして、忘れてはならないのは、映画本編で歌われる「長崎の鐘」に、すざまじいまでの迫力です。


主題歌「長崎の鐘」の素晴らしさ

映画も良いのですが、主題歌となっている藤山一郎が歌った「長崎の鐘」が凄い。聴き終わった後、感動でしばらく身動きができませんでした。

作詞はサトウハチローが担当。作曲は古関裕而

「長崎の鐘」は、映画の冒頭で聴けます。これまでに藤山一郎の「長崎の鐘」を聴いたことがある人は、オヤッと思ったはず。

私は本当に藤山一郎が歌っているのかと、耳を疑ったほどです。

これは正に絶唱です。美しく上品な歌唱で知られる藤山一郎ですが、この時の歌い方は尋常ではありません。鬼気迫るもの、悲愴の美を感じるのです。

体を投げ出すように歌い上げる藤山一郎を初めて聴きました。魂から血が噴き出さんばかりの歌唱と言うべきでしょうか。

おそらくは、この絶唱は現在発売されているCDでは聴くことができず、この映画でしか聴けないのではないでしょうか。その意味でも、価値ある映画だと言えます。

アマゾンで何回も視聴しましたが、この映画の中の絶唱は聴けませんでした。他の歌唱は静かで気品高いのですが、映画の中で歌われた時の凄み、迫力はありません。

最初のレコーディングは1949年4月4日に行われました。当日、藤山一郎は40度近い高熱を出していたそうです。後日、再吹込みする条件で録音したのですが、藤山一郎の絶唱がスタッフ・関係者一同の感動を呼び、再吹き込みを経ることなくそのまま発売されたという逸話が残っています。

その時の録音版が、この映画での歌唱かどうかは不明です。

それはともかく、この映画の中で歌われている「長崎の鐘」は、歴史の残る名曲であり、絶唱であることは、いくら強調してもし過ぎることはないでしょう。

「長崎の鐘」の歌詞はこちらで読めます。

長崎の鐘: 二木紘三のうた物語

のちに藤山一郎は、アコーデオンを携えて永井を見舞い、その枕辺で『長崎の鐘」を歌いました。永井はその礼として、次の短歌を贈っています。

新しき朝の光のさしそむる荒野にひびけ長崎の鐘

上記ブログで紹介されていた逸話も味わい深いです。

その他の原爆を題材にした映画

長崎に投下された原爆を題材にした映画としては、木下惠介監督の「この子を残して」を見たことがあります。

広島の原爆投下を扱った新藤兼人監督の映画「原爆の子」、今村昌平監督の「黒い雨」も有名です。

あまり語られませんが、吉村公三郎監督の「その夜は忘れない」も、ぜひ見ておいてほしいと思います。

以上の4作に共通するのは、生々しい描写がほとんどないことです。


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