ドラマとは人間と人間が火花を散らすことであるという言葉があります。優れたドラマはその意味で、濃密な人間関係劇であると言えるでしょう。

 

山田太一が脚本を担当したNHKドラマ「タクシー・サンバ」では、特に人間関係の描き方が際立っています。

 

「タクシー・サンバ」は、1981年10月17日、24日、31日にNHKで放送されました。

 

タクシードライバーに扮する、主演の緒方拳が圧倒的な存在感を示しています。

 

今回ご紹介したいのは、第2話の「愛のかたち」です。

 

緒形拳の相手役になっているのが、大原麗子。緒形さんも、大原さんも、若いですよ(笑)。そして、二人とも、これが男優、これが女優だという本物の演技を見せてくれています。

 

では、ドラマとしての魅力はどうでしょうか。

 

正直、3つの話の中で、物語の設定や展開は、際立ったところはありません。意外性がないのです。

 

予定調和というか、メロドラマ的な枠組みから飛び出すような「山田節」は爆発していません。

 

それだけに、緒形拳と大原麗子、この二人の演技に集中できるとも言えます。

 

山田太一はインタビューではいつもニコニコしながら、いっぱい喋りますが、あまり面白いことは言わない。というか、肝心なことは明かしていない気がします。

 

この「タクシー・サンバ」の「愛のかたち」は、決められたストーリーの中で、どれくらい、緒形拳と大原麗子の役者力を引き出せるか、そのことを存分に楽しんでいるのだと思えてならないのです。

 

やや陳腐なメロドラマ。山田太一ドラマには滅多にない設定の中で、どれだけ、深く、濃く、ドラマの味付けができるのか、それを堪能されてはいかがでしょうか。