山田太一が脚本を担当したテレビドラマのことを「山田太一ドラマ」と呼びます。

 

テレビドラマの場合、シナリオラターが脚光を浴びることも稀にありますが、山田太一のようには呼ばれることはなく、それだけ、山田太一は特別な脚本家して評価されていることなのでしょう。

 

さて、山田太一ドラマはほとんど見てきたのですが、その中で最高傑作はどれかと問われると即答はとてもできないと思ってきました。

 

しかし、最近になって、山田太一の最高傑作は「男たちの旅路」、これしかないと断言たくなってきているのです。

このブログでも、これまでに2度「男たちの旅路」について書いています。

 

山田太一「男たちの旅路」をNHKオンデマンドで見た感想

 

山田太一脚本「車輪の一歩」の感想

 

幸い、NHKオンデマンドの「特選ライブラリー」で「男たちの旅路」の第1部から第3部まで、全部で9話を見ることができます。

 

現在、塾を開講中のため、ほとんど自分の時間が取れないのですが、空いた時間は、この「男たちの旅路」を見ていといった感じ。

 

精神がくたびれた時、心が折れてしまいそうになった時、絶大なる力をくれるのが「男たちの旅路」だという気がしてきました。へたばりそうな時でも、勇気が出る稀有なドラマであります。

 

おそらくは、ここまで、背骨に響くドラマは、後にも先にもないのではないでしょうか。

「男たちの旅路」(おとこたちのたびじ)は、1976年2月から1982年2月までNHKにて放映されたテレビドラマ。スペシャル版を含めて、全13話で構成されています。

 

第1部の第1話「非常階段」から、いきなり、ガツンとやられました。

 

鶴田浩二が演じる吉岡晋太郎、この人物像の描き方が、激しく、静かで、狂おしく、そして粘りづよい。

 

吉岡晋太郎の描き出し方に、山田太一の執念さえ感じるのです。

 

神風特攻隊の生き残り。中年ガードマン。何かというと、お説教をたれる。

 

ふつうならば、これほどうっとおしいキャラはないはずです。

 

しかし、吉岡晋太郎のお説教を聴いていると、その言葉にのめり込んでしまい、もっと聴きたい、もっともっと聴きたいと思ってしまうから不思議です。

 

このドラマに登場する若者たちは反感を覚えながらも、吉岡に引きつけられてゆくけれども、私の場合はいきなり魅了されてしまった。この人物にだけは無防備で接することができると思ってしまう。

 

第1話の「非常階段」でのお説教も長いです。普通ならばチャンネルをかえるところでしょう。しかし、マゾではないですが、どうか、終わらないでくれと思ってしまうから、自分でも呆れるくらいです。

 

この人物、吉岡は、山田太一のしかけた罠のような気がしてきました。

 

1976年から、数年にわたって、何十年後かにこのドラマを見た人は吉岡から何を感じとるか、という罠というか、善意に満ちた挑発という爆弾を仕組んだとかしか思えないのです。

 

背骨まで響く、そんな人物像を、山田太一は、よくぞ描き出してくれたと、私は感嘆しています。

 

今日は時間がないので、第1話の感想は次回に語ることに……。