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笠木透「わが大地のうた」に生きる原点を感じとった遠い日のこと


このブログ「美しい言葉.com」では、これまで様々な詩をご紹介してきました。中には、楽曲とともに唄われる、いわゆる歌詞も含まれています。今日登場する詩も歌詞として歌い継がれている歌詞です。

笠木透という人をご存じでしょうか?

1937年生まれの方ですが、今も現役のフォークシンガーです。

数奇な縁ともうしましょうか、笠木透さんには一度、お目にかかっています。仕事で、中津川のコンサートに行った時、そのトークの面白さに強くひかれました。その時も「日本最高齢のフォークグループ」として、所属するフォークフループ我夢土下座」(カムトゲザ、COME TOGETHER)」のことをコミカルに紹介されてたのを鮮明に憶えています。

正直、笠木透さんの歌をたくさん知っているわけではないのですが、今回ご紹介する「わが大地のうた」を思い出の歌であり、特にその歌詞は、本当に素晴らしい。

まずは、日常の喧騒を忘れて、以下の歌詞をお読みください。

わが大地のうた

1.から松 こめつが 針葉樹林
かもしか 月の輪熊 走る稜線
そびえ立ち 連なる わが山々よ
そびえ立ち 連なる わが山々よ
いくたびか春をむかえ
いくたびか夏をすごし
いくたびか秋をむかえ
いくたびか冬をすごし

2.柿の木 赤土畑 広がる水田
かわやなぎ 青い水 流れる河川
この土地に 生きている 私の暮らし
私に流れる 人たちの歴史
私がうたううたではない
あなたがうたううたでもない
わが山々が私のうた
わが大地が私のうた

3.かるかや かやつり草 積乱雲
からすうり 月見草 風渡る草原
この土に 私の すべてがある
この国に私の 今がある
いくたびか春をむかえ
いくたびか夏をすごし
いくたびか秋をむかえ
いくたびか冬をすごし

4.かもめどり 黒松 岩礁海岸
かつおどり うみつばめ うねる水平線
この国の 歴史を 知ってはいない
この国の未来を知ってはいない
けれども私は ここに生まれた
けれども私は ここで育った
私がうたううたではない
あなたがうたううたでもない
わが山々が私のうた
わが大地が私のうた

いかがでしょうか?

私が最初に聴いたのは、笠木透さんの歌唱ではなくて、高石ともやさんという日本のフォークの草分け的なシンガーです。縁とは不思議なもので、高石ともやさんにも仕事でインタビューしたことがあります。

1時間以上も二人きりで話すことができ、私にとって貴重な体験となりました。

高石ともやさんが歌う「わが大地のうた」はこちらで聴けます。

わが大地のうた(高石ともや&ナターシャセブン、語り、笠木透)

 

私はこの歌を聞くたびに、遠い過去のことを思い出します。

「わが大地のうた」を知った頃、私は失意のどん底にありました。失恋をしてしまったのです。その傷を癒すために、私は山梨県の農家に住み込んで、酪農や高原野菜の栽培の手伝いをしはじめました。

八ヶ岳のふもとに、その農家はありました。5月はじめの八ヶ岳はまだ半分くらい雪をかぶっており、空の蒼さと雪の白さとの鮮やか過ぎるコントラストを見た時、魂が震えるのを覚えました。

聴こえるものといえば、吹きぬける高原の風、牧草のざわめき、郭公や雲雀たちの合唱だけです。

私の住処となった、はなれのプレハブ小屋で、カセットレコーダーで「わが大地のうた」を、何回も何回も、繰り返し聴いておりました。

月並みな表現になりますが、この「わが大地のうた」には、生きることの原点があります。私にとっては、生きることの原点に気づかせてくれた名曲、名詩が「わが大地のうた」なのです。

 

今読みかえし、聴きなおしてみますと、この歌のスケールの壮大さに心うたれました。

「わが大地のうた」は、単なる自然讃歌ではありません。空間の広大な広がりだけでなく、私たちが生まれるずっと以前の頃から、現在、未来へと流れる歴史的な時間の雄大さに、心癒されるのです。

たぶん、人は自分だけのことでは、癒されないのでしょうね。自然や歴史といった、自分の存在を超えた大きなものに対し、謙虚になった時、癒しへの扉が開かれる気がしてなりません。

人間は、人間たちのエゴを追求しているうちは幸福にはなれないのだと思います。人間はあくまで自然の一部でしかないのです。おごりを捨て、私たちの血液、遺伝子、魂の中に脈打つものに、耳を澄ませるべきではないでしょうか。

そうした理屈は不要だと感じるほど、この「わが大地のうた」は、力強く、微動だにしません。あの八ヶ岳のように、揺るがず、穏やかに微笑んでくれていると感じるのですね。

美しい日本語で書かれた作品をまとめました。

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