今回は三木露風が作詞した「赤とんぼ」という童謡の詩をご紹介。
赤とんぼ
夕焼小焼の、赤とんぼ
負われて見たのは、いつの日か
山の畑の、桑(くわ)の実を
小籠(こかご)に摘んだは、まぼろしか
十五で姐(ねえ)やは、嫁に行き
お里のたよりも、絶えはてた
夕焼小焼の、赤とんぼ
とまっているよ、竿(さお)の先
もの悲しい、あまりにも日本的な抒情。現代人はこういう風情を、忘却するために、日々あくせく生活に追われているのだろうか。
少女を売るという行為は、戦後も続けれていた。その悲惨な事情は、映画「続 警察日記」で描かれている。
非人間的な行為はやめなければいけない。
しかし、日本ならではの情緒は、残してゆくべきである。
まあ、そういう理屈が馬鹿馬鹿しくなるほど、この「赤とんぼ」という童謡はいい。
だが、日本は変わり果てた。「赤とんぼ」に象徴される、日本の原風景は、いつか日本人の心から抹殺されてしまうのだろうか。
いやいや、柳田国男の「遠野物語」を読めば誰もが理解できるのだ。
時代がいかに変化しようとも、日本人の遺伝子には「赤とんぼ」的な抒情、心の風景は脈打ち続けるであろう。