「あの夢この歌」という映画があるのですが、その主題歌の詩が素晴らしい。
作詞したのは西條八十。文学の香気高く、豊かな抒情に酔いしれることができます。
あの夢この歌
作詞 西條八十 : 作曲 古賀政男
1 おさない日かなしい日 聞いた歌
優し メロディー
君うたう今うたう 花の唇燃えて
ときは春あかしやの みどり白雲
楽しげに渡鳥 翼はかがやく
2 涙ぐみ別れたる うるわしの
君の姿 浮かび来て
流れ来てわれを 泣かすよ呼ぶよ
若き日の恋の花 すみれひなげし
におう夜の歌声に 月さえかがやく
3 あの夢もこの夢も ながれ去り
残る メロディー
あの人がこの人が 哀れ歌いしメロディー
歌は蝶むらさきの 紅(べに)の蝶々
華やかに朗(ほが)らかに こころを結ぶよ
この音律の心地よさ。すべての言葉がまろやかにで、心を優しく包み込んでくれるようです。
日本人の心のふるさとがある、と感じるのは私だけでしょうか。
「あの夢この歌」は、幸いにもYouTubeにて、北原謙二の歌唱で聴くことができます。
映画「あの夢この歌」が公開されたのは1948年。戦争が終わって3年後に作られたのですね。
悲惨な時代であったはずなのに、その時期に生まれた歌は、何と温かく優しいのだろう。
私たち日本人は長いこと戦争を知りませんが、何か大切なものを失っているように思われてなりません。