山田太一脚本「車輪の一歩」の感想

山田太一脚本ドラマを続けて2本見ました。「車輪の一歩」と「チロルの挽歌」です。今日は「車輪の一歩」について、お伝えします。

 

「車輪の一歩」は、長いシリーズ「男たちの旅路」第4部の第3話。「男たちの旅路」の最終回。NHKで放送されたのは、1979年11月24日ですから、かなり古いドラマです。

 

シリーズドラマの一話というより、独立した映画作品のような迫力を覚えました。

 

「車輪の一歩」の「車輪」は「車椅子」の「車輪」を指しています。

 

「車椅子」を使って生活している人たちが、「車輪の一歩」には多数登場し、この作品の主人公となっています。

 

シリーズの主役である鶴田浩二さえも脇役まわり、車椅子で生活する人たちの心理を浮き彫りにする役割に徹しているのですね。

 

ずいぶんたくさんの山田太一ドラマを見てきましたが、その中でも「車輪の一歩」は屈指の名作であると感じました。

 

山田太一の視線の角度と深度

 

名作という意味は、以下のとおりです。

 

ドラマの質の高さはどこで測られるのか? 私は脚本家の視点がキーポイントであると思っています。

 

山田太一の視線はいつにも増して鋭い。時には、視聴者の臓腑をえぐる、それくらいに、登場人物の心理をあぶりだす。

 

このドラマを見る者は、山田太一のテーマを見る視点の角度がかわるごとに、新しい発見ができます。、

 

また、山田太一がテーマへの踏み込みがあまりにも深いため、思わず唸り声を上げてしまうのです。

 

脚本家のテーマを見る視線の角度と深度によって、ドラマの価値は決まる、と「車輪の一歩」を見て痛感しました。

 

テーマ音楽と役者の演技の質

 

テーマ音楽が良いです。癒されます。英語なので、ベタな感じがしません。山田太一の楽曲選曲は時に首をかしげることがありますが「車輪の一歩」は大当たりですね。

 

そのテーマ音楽(挿入歌)はこちらでラストシーンとともに聞けます

男たちの旅路 車輪の一歩 ラストシーン 山田太一脚本 1979年

 

 

キャストの豪華さにも驚かされます。

 

鶴田浩二
柴俊夫
清水健太郎
岸本加世子
斎藤とも子
赤木春恵
金井大
京本政樹
斎藤洋介
古尾谷雅人
見城貴信

 

そして、お一人お一人の演技力の卓越さです。オープニングとラストシーンに出てくる登場人物たちの表情の違い、そこにドラマづくりの原点があるように感じられました。

 

長いシリーズの最終回に「車輪の一歩」を持ってきたところに、山田太一の意図が見える気がしたのは私だけでしょうか。

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フランク・ダラボン監督「ショーシャンクの空に」の感想

スティーヴン・キングの原作の映画をもう一つ。

フランク・ダラボン監督の「ショーシャンクの空に」。

人間味あふれるドラマが胸をうつ。

ショーシャンクの空に

1994年アメリカ映画。
監督・脚本:フランク・ダラボン。
出演:ティム・ロビンス、モーガン・フリーマンほか。

30年余の刑務所生活の中でもおのれを見失わず、ついには脱獄に成功した男の奇妙な逸話の数々と、その親友の囚人をめぐるヒューマン・ドラマ。
ホラー小説の大家、スティーブン・キングの非ホラー小説の傑作といわれた中編『刑務所のリタ・ヘイワース』(邦訳は新潮文庫『ゴールデンボーイ』に所収)を、「フランケンシュタイン(1994)」の脚本家、フランク・ダラボンが初監督と脚色を手掛けて映画化。

DVD情報⇒ショーシャンクの空に

インターネットにスティーブン・キングのページはあふれている。
その中に、ホラーは読まないが、キングだけは好きという内容の文章を見つけた。
こういう人は多いのではないか。

キングの小説は温かいというか、熱い。
感傷的に人間への優しさを語ることはないが、作品の根底には人間への愛情があふれていることは言うまでもない。でなければ、これだけの読者は獲得できないだろう。
「ショーシャンクの空に」はキング原作の映画の中で、傑作の部類に入ると言われている。
その通りだろう。
この作品のほかで、映画として成功していると感じたのは「シャイニング」・「黙秘」・「スタンド・バイ・ミー」ぐらいだろうか。
「ミザリー」は人気作だが、B級的なベタなテイストがちょっと気に食わない。

ロバート・ロドリゲス監督「パラサイト」の感想

パラサイト」の登場です。

この映画を見るのは2度目ですが、今回も、充分に楽しめました。

ストーリーがわかっているのに、かなり面白いということは、やはり何かあるのだと思いますね。

『パラサイト』(The Faculty) は、1998年製作のアメリカ映画である。
ロバート・ロドリゲス監督、ケヴィン・ウィリアムソン脚本のホラー。
ジャック・フィニイの『盗まれた街』がベースになっている(引用元:ウィキペディア)。

ハイスクールを侵略したエイリアンと高校生たちの死闘を描いた、SFXホラー・サスペンス。J・ハートネットほか、ブレイク寸前のニュースターが生徒役で多数出演(引用元:「DVD NAVIGATOR」データベース)。

DVD情報⇒パラサイト

この映画は、歴史的名作とは、そういう大げさなものではないですが、B級映画かというと、そうではないですね。

学園内での群像劇としても成立しているし、ラストまでのスピーディーな展開は、ナカダレなしに楽しめます。

映像も美しく、良質なエンターテイメント作品と断言したい気分です。

最近見た映画が、溝口健二監督の「雨月物語」、その前がキャロル・リード監督の「邪魔者は殺せ」でしたから、逆に「パラサイト」がたいへん新鮮でした。

こういう理屈ぬきに没入できる映画が、貴重だと思います。

登場する生徒役の若い俳優たちがフレッシュで、その表情を追いかけているだけでも、満足できたくらいです。