生まれ故郷である浜松市に戻ったのは、一昨年の2月だったと思います。

幼い頃には緑に恵まれた町だという印象が強かったのですが、その緑のほとんどが田んぼだったことに今になって気づきました。

私は浜松市中区領家に住んでいるのですが、多くの田んぼは住宅地に変貌してしまったので、風景としては、実に殺風景なのです。

浜松という街は、戦後、ほとんど植樹をしてこなかったことが、怖いほどよくわかります。

街の風景というものは、林とか森と組み合わさって、調和のとれるものです。それが、車道が東西南北に走り、道路の間に宅地が広がっているだけでは、それはもう風景とは言えません。

背の高い街路樹のある歩道があれば、街に風情が生まれます。樹木が街の歴史を語り、季節ごとに風景を変化させるので、人の心も潤うのです。

だいたい、浜松には、人が歩くための道などほとんどありません。多くの地方都市は同じかもしれませんが、車道の隅を歩かなければいけないので、雨の日などは、とても外出する気分になれないほどです。

まあ、私自身、車を運転しないので、こんなことを痛感しているのかもしれません。

浜松は車社会だから、車を中心に暮らしていないと、疎外感を覚えるのでしょうか。

文化不毛の地とは言いたくはありませんが、木を植えて育てるという発想のない街に、何だか肌寒さを覚えるのです。

もう、箱ものは要りません。ビルや大規模なショッピングセンターなど、建てて欲しくない。樹木を植え、人が風景を楽しみながら散歩できる歩道をつくってほしいと切に願っているのは、私だけなのでしょうか。