川崎洋の「いま始まる新しいいま」というをご紹介します。

 

いま始まる新しいいま

 

心臓から送り出された新鮮な血液は

十数秒で全身をめぐる

わたしはさっきのわたしではない

そしてあなたも

わたしたちはいつも新しい

 

さなぎからかえったばかりの蝶が

生まれたばかりの陽炎(かげろう)の中で揺れる

あの花は

きのうはまだ蕾だった

海を渡ってきた新しい風がほら

踊りながら走ってくる

自然はいつも新しい

 

きのう知らなかったことを

きょう知る喜び

きのうは気づかなかったけど

きょう見えてくるものがある

日々新しくなる世界

古代史の一部がまた塗り替えられる

過去でさえ新しくなる

 

きょうも新しいめぐり合いがあり

まっさらの愛が

次々に生まれ

いま初めて歌われる歌がある

いつも いつも

新しいいのちを生きよう

いま始まる新しいいま

 

「う~ん、何でこんなに前向きになれちゃうの?」って、思わず笑ってしまいました。

 

もちろん、深い敬意の気持ちを込めて、笑わせていただきました。

 

理屈や観念、戦略や計略、功利性や合理性などが、ほとんど役に立たない局面が、人生には何回も訪れます。

 

無節操とも呼んでもいい生命力だけが尊いと感じる……真っ青な空の輝き、萌えだした若葉の匂いが、ただただ嬉しい……そういう気持ちになった時が私にもあるのです。

 

絶望の底に突き落とされた状況、予想もできない不幸が次々にやってきて止まらない、最大の窮地、死とすれすれの生……そうした時に私を救ってくれたのは、無邪気な人の笑顔であり、路傍に咲く可憐な花であり、大きな樹木の上を涼し気な葉擦れの音をたてて渡ってゆく風でした。

 

私を救ってくれたものには、理屈や理論はなかったのです。作為が全くない、生命エネルギーの発露といったら固すぎる、あるがままの自然な命の営みが、私に元気を与えてくれでした。

 

この川崎洋の「いま始まる新しいいま」も良いですし、武者小路実篤の詩「進め、進め」も素晴らしい。

 

これまでもそうですが、「日本の名作詩ベスト100」には、前向きで明るい詩をどんどんと選んでゆきたいと思っています。