うなずく」か、それとも「うなづく」か、書こうとして迷ったことはありませんか。

 

「ず」が正しいのか、「づ」が正しいのか、はたまた、どちらでもいいのか?

 

私の場合、このように不安を覚えた時は、辞書を引き、確認してから書くようにしています。

 

そこで、今回は「うなずく」をまず、辞書で調べ、次に手元にある日本語関連の本で確かめてみました。

 

結論から申しますと、昭和61年の内閣告示の現代仮名違いでは、「うなずく」が基本的には正しく、「うなづく」は慣用表現として許容されているのです。つまり、どちらの書き方でも、間違いではありません。

 

「うなずく」の語源がややこしい。

 

「うなずく」を語源を知ると、余計にややこしくなります(苦笑)。

 

「うなずく」は、もともと「項(うな)突く」からきています。「項」は「うなじ」と読み「首・頭」のこと。この場合の「突く」は「頭、額、膝、手などを地面につける」という意味です。

 

地面につけるわけですから「うなづく」と表記しても良さそうなのですが、それがそういうふうにはなっていないので、話がややこしい。

 

現代では「(~を)突く」という意味合いが消えてしまっているため、「頷く」と一つの漢字に表記されるなど、ひとくくりの言葉になっている(二語に分解しにくい)ので「うなずく」と表記するのが基本だとされています。

 

文科庁の公式ページ「現代仮名遣い 本文 第2(表記の慣習による特例)」をご覧ください。以下のような記述があります。

 

次のような語については、現代語の意識では一般に二語に分解しにくいもの等として、それぞれ「じ」「ず」を用いて書くことを本則とし、「せかいぢゅう」「いなづま」のように「ぢ」「づ」を用いて書くこともできるものとする。

 

例 せかいじゅう(世界中)

いなずま(稲妻) かたず(固唾) きずな(絆*) さかずき(杯) ときわず ほおずき みみずく

うなずく おとずれる(訪) かしずく つまずく ぬかずく ひざまずく

あせみずく くんずほぐれつ さしずめ でずっぱり なかんずく

うでずく くろずくめ ひとりずつ

ゆうずう(融通)

 

「うなずく」は「項突く」ともともとは二語から構成される言葉だったのですが、現代では一語の意味合いが強く、文化庁がいう「二語に分解しにくいもの」に分類されるので「うなずく」が本則として正しいことになります。

 

ただし、「づ」を用いてもかくことができる、とされているので、要するに「うなずく」が基本的に正しいのですが「うなづく」と書いても良いわけです。

 

「うなずく」を漢字で表記する場合、「頷く」か「肯く」を使う。

 

「うなずく」を漢字で表記する場合、以下の3種類があると辞書には書かれています。

 

「頷く」「肯く」「首肯く」

 

3番目の「首肯く」は「首肯(しゅこう)する」という言葉もありますが、現代では「首肯く」も「首肯する」も使わないでしょう。

 

昔の小説を読んでいると、「首肯(しゅこう)する」という言葉がよく出てきます。しかし、最近、日常では見たことも聴いたこともありません。

 

ですから、通常では「頷く」か「肯く」を使うわけですが、意味が違いますので、注意してください。

 

「頷く」は、動き、動作、運動をあらわす時に使う。

 

「広辞林」によれば「うなずく」の一つの意味を「首を下に動かす」と説明しています。

 

「頷く」の「頷」には「あご」という意味があり、人間の部位を指す言葉です。

 

その意味から「頷く」は、基本として「動作」をあらわす時に使うべきです。

 

「肯く」は、気持ち、心理、意志をあらわす時に使う。

 

「大辞林」は「うなずく」のもう一つの意味を「肯定・同意・承諾などの気持ちを表して首をたてに振る。合点(がてん)する。」と説明しています。

 

ですから、「肯く」は、「心理」をあらわしたい時に使うべきなのです。

 

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