風花未来が、優れた詩や美しい大和言葉など、日本語の力を再発見。Web文章の書き方講座も連載中。

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美しい言葉

文章表現力を豊かにしてくれる本のまとめ

文章表現力が豊かになるには、どんな本を読めばいいですか、と質問される時があります。今回は15分~30分くらいの空いた時間を利用して読み進んでゆける本をご紹介。忙しい人、時間がない人に特にオススメです。辞典、詩、コラム、エッセイ、小説など、多彩なジャンルから厳選。

石川啄木歌集

感覚的な文章は生き生きとして、読んでいるとワクワクしてきます。では、どうしたらそのような文章が書けるようになるのでしょうか。

みずみずしい感覚的な文章を書くには、筆者の感性が開いている必要があります。多くの人が気づいていないのですが、感覚と閉じたまま文章を書いているために、文章に色合いや躍動感が出てこないのです。

読んでいて知らぬ間に自分の感性を開いてくれる小宇宙があります。それが、石川啄木の短歌です。

無著成恭「無着成恭の詩の授業」

このページでご紹介している本の中で、どれか一冊だけを選ぶとしたら、ちゅうちょなく、この「無著成恭の詩の授業」を推薦いたします。

無著成恭が子供たちに詩の講義をするという設定ですが、子供たちの発言にきっと衝撃を受けることでしょう。無著成恭は「詩を教えることで、子供が人間であることを教えたい」と言っていますが、実は逆です。読者は子供たちの声を聴くことで、詩の素晴らしさ、言葉の豊かさ、さらには、人間であることの歓びを味わうことができるという稀有な書物が、この「無著成恭の詩の授業」。

これほど型破りで、これほど正攻法な詩の本を私は知りません。

荻昌弘「映画批評真剣勝負 ぼくが映画に夢中になった日々《作品鑑賞篇》」

映画評論なのに泣けます。映画評論なのに酔いしれてしまいます。日本語とは、これほど美しいものだったのか、と仰天してしまう名文の宝庫。

詳しくは、こちらで書きましたのでごらんください⇒酔いしれて、泣きぬれて。美しい日本語に浸れる電子書籍に出逢いました。

柳田 国男「遠野物語」

「言葉の力」に、思わずのけぞることでしょう。「遠野物語」を読んでいると、体の中からザワザワと何やらが騒ぎだす。強い風が体を吹き抜けてゆくのを感じる。これが、言葉の本当の凄さなのかもしれません。近代・現代文学が置き忘れた神的かつ暴力的なエネルギー。「遠野物語」の言葉力こそ、語り継がれるべきだと思うのです。

G.ガルシア=マルケス「エレンディラ」

「遠野物語」に負けない、不思議な言葉力が感じられるのが、G.ガルシア=マルケスの「エレンディラ」。常軌を逸した美しい物語空間をめまいを覚える。と同時に、言葉の持つ抗しがたい「浮力」にたじろぎました。読んでいるうちに本当に体が浮いている感覚におちいり、その妙な感じは、何週間も続いたのです。「百年の孤独」以上に奔放な魔術的リアリズムに溺れることができます。ここまでくると、もう、翻訳であることも忘れてしまうのでした。言葉の虜(とりこ)になりたい人は、ぜひお読みください。

東山魁夷「泉に聴く」

その清冽な文章を読むと魂まで洗い浄められてしまう。これほど美しい散文を書ける日本人がいることが奇跡だと感じるほどです。川端康成について語った「星離れ行き」、「風景開眼」は歴史に残る名文。

茨木のり子詩のこころを読む

短い作品でありながら、意外な言葉の躍動、思いがけない発見、言葉の底力を感じとれるのが、詩です。しかし、詩など学生時代に読んだきりで、詩集など開いたこともないという人もおられるでしょう。そんな人にオススメしたいのが、この詩の入門書です。学生さん向けに書かれているので、わかりやすく、しかも、侮り難い奥深さも味わうことができます。1日数分間、1篇づつ読むだけでも、言葉に対する感覚、物事を見る角度などに大きな変化があらわれることでしょう。

深代惇郎天声人語

短い時間で読めて、しかも、文章修業に役立つのが、優れたコラムです。天声人語は800字の美学という言葉が想い浮かぶほど、磨きあげられた言語空間を表出しています。天声人語は朝日新聞の中で最も筆力のある記者が担当するといわれているのですが、古い天声人語の歴史の中で、最高峰を築いたのが、深代惇郎です。「不世出の名コラムニスト」と呼ばれる深代惇郎の天声人語には人間への深い人間愛が息づいており、時に涙さえ誘います。発売当時、爆発的に売れたので、絶版となった今でも古本で、簡単に入手可能です。

小林秀雄考えるヒント

「考えるヒント」に収録されているエッセイは、どれも短く、一気に読めてしまいます。短いにもかかわらず、読後に深くて心地よい疲労感を覚えるのが特長。小林秀雄の評論は難解だと言われますが、頭で意味を理解しようとするからです。小林が語る核心を感じとれれば、読書は悦楽となります。直感的思考の達人である小林秀雄の言葉は鍛えぬかれたアスリートの筋肉美を想わせる。理解する読書ではなく、感じる読書の陶酔に似た快感を、味わってください。

吉野せい洟をたらした神

70歳をすぎてから筆をとった、農婦の随筆。串田孫一は「洟をたらした神」を「刃毀(はこぼ)れなどどこにもない斧で、一度ですぱっと木を割ったような、狂いのない切れ味」と評したそうです。頭でこねくりまわしたり、造花のような装飾をしたりする文章とは真逆の言葉宇宙。シンプルな記述の中に、生命感あふれる言葉たちの躍動を体感できます。

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