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読んでおきたい日本の詩集5冊

美しい詩 - 美しい日本語の作品

まずは、ここから始めてほしい5冊の詩集

 

では、以下、日本の名作詩集をセレクションしてみます。たくさん選んでも、詩になじみの薄い人には負担になる(迷う原因になる)かもしれませんので、まずは5冊だけ厳選してみました。

 

日本の名作詩集ベスト5

 

1)まど・みちお詩集

 

 

2)金子みすゞ詩集

 

 

3)坂村真民「花ひらく 心ひらく 道ひらく」

 

 

4)サトウハチロー詩集

 

 

日本人の心のふるさとが、ここにある。そういうありきたりな言葉しか出てこないほど、サトウハチローの詩は、懐かしく、温かい。「ちいさい秋見つけた」「リンゴの唄」「長崎の鐘」「うれしいひなまつり」などの名作を収める。

 

5)高村光太郎詩集

 

 

無数の詩を読んできた私にとって、詩集を5冊に絞ることなど容易ではない、と思われた。

 

しかし、案外、簡単だった、あっけないほど。

 

その理由は、詩を芸術作品として味わいましょう、という意図で選んでいないからだ。

 

青春期から愛読してきた詩人、八木重吉、中原中也、立原道造、宮沢賢治などを入れなかった理由は私には明確に説明できる。

 

八木重吉には優れた詩篇が比較的多い。しかし、詩集として見た時、疑問符がつく。駄作も多く、感性が繊弱すぎて、現代という困難な時代を生き抜こうとする人たちが、入門書として読むには、リスクが小さくないと感じた。

 

中原中也はおそらくは、日本近代詩人の中で、もっとも優れた詩をたくさん書いた詩人である。中原中也詩集には駄作がほとんどない。しかし、詩世界は暗く虚無の闇に閉ざされており、これから詩を読もうという人、詩に触れることで希望ある未来をつかもうとする人たちには過負担になると感じた。

 

立原道造と宮沢賢治には、傑作詩があるが数は極めて少ないので、詩集として紹介する必要はないと感じた。

 

その他、入れようか迷った詩人としては、石川啄木、若山牧水、三好達治などがいる。

 

ベスト5が、ベスト10、ベスト20になれば、今回もれた詩人の詩集は、入ることになるだるだろう。

島木健作の「赤蛙」は、心の糧になる珠玉の短編小説。

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良い本に限って、絶版になり、なかなか読めないことがあります。

 

また、極めて優れた作品であってもマスコミが取り上げることがないので、忘れ去られている作品も多いのです。

 

日本の名作文学は、日本人の文化遺産であり、22世紀まで伝えてゆかねばなりません。

 

そこで、今回は、心の糧になる日本文学の名作をシリーズでお伝えします。

 

比較的短くて読みやすく、表現も難解でないもの。感動できれば、一生忘れないであろう、純度と深みを有した作品だけを集めてみました。

 

「この作品を忘れられたら困る」という気持ちを込めて、あまり読まれていない「隠れ名作」的なものも入れてみました。

 

では、さっそく、ご紹介しましょう。

 

読み継ぎたい、語り継ぎたい、日本の名作文学(日本人の必読書)、その第1位は、島木健作の「赤蛙」。

 

一匹の蛙を描写した短編小説ですが、人にとっても生きるとは、こういうことかもしれません。命というもの、運命というものを、澄明な文体に浸りながら味わえます。読み終えた時、あなたはきっと静かにつぶやくでしょう、「この蛙は、自分だ」と。

 

島木健作の「赤蛙」は、一言で形容するならば「清冽」です。生きている感じ(生命感)を、ここまで純粋に結晶化させた短編小説は、世界にも例を見ないのではないでしょうか。

 

日本人として生まれたならば、絶対に読んでおくべき作品だと、強調させていただきます。

 

再出版されたのですが、最近、残念ながら絶版になってしまいました。電子書籍(青空文庫)ならば無料で読めます。

中野好夫の「文学の常識」は名著です。

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中野好夫(なかの よしお)の「文学の常識」という著書をご存知でしょうか。中野好夫という名前を知らない人が多いのではないかと思います。

 

「文学の常識」は文庫本ですが、現在は絶版になっているのです。

 

古本なら購入可能⇒中野好夫「文学の常識」

 

しかし、私の体験から、中野好夫の「文学の常識」は名著であると断言できます。

 

この本は、老若男女問わず、多くの人に読んでほしいので、今回、ご紹介することにしました。 続きを読む

戸川幸夫の小説「高安犬物語」を読んだ感想。

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戸川幸夫の「高安犬物語(こうやすいぬものがたり)」を再読しました。

 

思うこと多々あったのですが、突きつめると、以下の点に集約されるかと思います。

 

1)抜きんでた筆力

 

動物文学という狭いジャンルに押し込められやすいので、あまり知られていませんが、戸川幸夫が、日本の近代小説の中で、屈指の筆力の持ち主だということが実感できます。

 

なぜ、こうした類まれな小説世界が生み出されたのか、それは正に、この磨き上がられた文章の底力と品格があればこそなのです。

 

2)体(魂)の中に眠っていた何かを揺り起こされる。

 

自動車や家電に代表される便利社会は、パソコンや携帯端末の普及によって、次の段階に突入していると思われます。

 

それは、生の体験を中心としリアルな感覚でなはく、情報や仮想空間が日常生活を支配するようになったということです。

 

そうした生活では、太古より人間が生物(動物)として備えてきた本能や感覚が鈍くなる一方で、人間の中の野生はいつか死滅するのではと思えるくらいです。

 

便利社会では、生命体としての人間から、極めて大切な力を衰弱させていることは間違いありませんね。

 

ところが、「高安犬物語」を読みますと、ふだんは眠っていた感覚が、鮮やかに甦ってくるのを覚えます。名状したがい生命感のようなものが体にみなぎってきて、思わず胴震いをしてしまいそうになるほどです。

 

3)厳しさの中にある優しさ。

 

野生動物の世界には、非情な掟があります。弱肉強食という残酷な世界に、野性動物は生きています。

 

では、戸川幸夫の小説のテーマは、野性動物の猛々しさを描くことになるかというと、そうではありません。

 

戸川幸夫の描く過酷な世界にも、体の芯が温まるほどの優しさがあります。ただ、その優しさは、厳しさの中にしかありえない、感傷や打算を排した、強い優しさなのです。

 

人間と動物との交流が描かれますが、そこには一点の慣れ合いはありません。

 

以上が「高安犬物語」の魅力の要点だと思うですが、いかがでしょうか。

 

実は、4番目に「現代社会への警鐘」をあげようかと思いました。ただ、そうした概念的な表現そのものが、戸川文学にふさわしくない気がしたので、あえて、入れませんでした。

 

以上が、戸川幸夫の小説の魅力のポイントだと感じます。

 

付け加えることがあるとしたら、動物と動物との戦いの場面の描写力です。動物たちの素早い動きを活写することは極めて困難だと想像できますが、CGを駆使した映画では絶対に描き出せない臨場感があります。