以前、手紙文(電報)の名作をご紹介しました。この記事でしたね⇒世界一美しい手紙文は?

 

さて、今回は芥川龍之介の手紙文、しかも、ラブレター恋文)を取り上げてみます。

 

芥川龍之介が自殺したのは、昭和2年です。文子夫人は未亡人となり、比呂志、多加志(戦死)、也寸志を、懸命に育てあげました。

 

そんな文子さんの心の支えとなったのが、芥川龍之介からもらった一通の手紙だったそうです。婚約時代に芥川が文子さんに出したラブレター。

 

それでは、さっそく、芥川龍之介のラブレターを引用してみます。

 

アタシハ アナタヲ愛シテオリマス コノ上愛セナイクライ愛シテ居リマス ダカラ幸福デス 小鳥ノヤウニ幸福デス

 

この文も、カタカナが効いていますね。だから、少ない漢字が鮮明に浮き上がっている。

 

そして、何より、心情が初々しく純粋で、読む者の心に響きます。

 

言葉の強さ、文章の美しさは、テクニックで決まるのではない。書き手がどれくらい純粋に、愛情を抱いて語ってるかが大事。言葉づかいはシンプルな方が、人への影響力は大きくなる。

 

このように語るのが愚かしく思えるほど、芥川のラブレターは理屈を超越して輝いています。

 

ここまでくると、手紙というよりも、詩ですね。

 

ラブレターには名文が多いと言われますが、人を愛する気持ちが素直に反映されているからでしょう。文章修業を続ける途上で、ときどき、恋文がなぜ人の胸をうつのかについて、考えてみるのも有益かもしれません。