人がそれがなければ絶対に生きられないものは、何でしょうか。

 

まず最初に想い浮かぶのは「」です。光は陽光である場合もあり、また心の希望を示す言葉でもあったりします。

 

」という言葉ほど、強く、そして美しい日本語はないかもしれない。

 

20代の後半、私は週末になると沢を独りで歩いていました。山に出かけ、渓流に沿ってい歩いてゆくだけです。あの頃、自分は何を考えながら、渓流の音を聴き、陽光を受けて輝く、青葉若葉を見つめていたのか……今となっては明確に想い出すことはできません。

 

青春期の終わりを感じつつ、孤独をかみしめるように、歩いていたのだと思います。あの頃、密かに憧れているものがありました。

 

それは一文字の言葉です。

 

「水」「土」「花」「星」「木」「森」「風」……そして「光」。

 

人が人として生きるために、どうしても必要な……いや、人がどうのこうのというのではなく、この世にあるということを示す、最少体としての言葉、元素のような記号に心惹かれていました。

 

余計な装飾を排除した、存在証明を想わせる一文字の象形だけが、信じられる気がしていたのでしょう。

 

では、今はどうか?

 

やはり「光」は私にとって特別な存在であることに変わりはありません。

 

心の中に「光」が見えるかぎり、歩き続けられる。「花」を自在に想い描けるし「風」の色を見ることもできる。

 

今一度、原子の輝きを示す一文字の世界へ。原初的なおののき、それを感じていた時に帰りたい気持ちが強くなっています。