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チャールズ・チャップリン(1889年~1977年)は、イギリス出身の映画俳優であり、映画監督。喜劇王と呼ばれ、脚本や作曲の才能も素晴らしく、天才中の天才です。
チャップリンの名言はたくさんありますが、その中で、最も有名な言葉ではないでしょうか。
「人生はすばらしい。怖れの気持ちさえ持たなければね。人生で必要なものは、勇気と、想像力……そして少しばかりのお金なんだよ」
“Yes, life can be wonderful, if you're not afraid of it. All it needs is courage,Imagination, … And a little dough”
最後の「dough」は、スラング(俗語)で、「お金」を意味します。そのために、日本では「some money」に差し替えらえている場合が多いようです。
有名な映画評論家の淀川長治さんも、その映画解説の中で「サムマネー」とおっしゃっていました。
「そう、人生はすばらしい。怖れの気持ちさえ持たなければね。人生で必要なものは、勇気と、想像力、そして少しばかりのお金なんだよ」は映画の中のセリフです。
1952年に公開されたチャップリンの名作映画「ライムライト(Limelight)」出てくるセリフ。老喜劇役者のカルヴェロが、心の病で脚が動かなくなったバレリーナのテリーに贈った励ましの言葉です。
日本では、この映画の中の名セリフが普及して、わかりやすくアレンジされてしまいました。
それが「人生には〇〇と〇〇とサムマネーが必要」という定型文です。
〇〇の部分を自由に言い換えて良いわけです。
「愛と勇気とサムマネー」「希望と想像力とサムマネー」「夢と希望とサムマネー」という具合に……。
なぜか、「サムマネー」、つまり「お金」だけは必ず入っているのですね。
映画のライムライトは何回か見てきました。最初に見たのは二十歳くらいの時で、最初から最後まで号泣。自分の体の中から、よくぞこれほどまでの涙が出てくるものだと驚いたのを覚えています。
時が流れ、中年になった見返して、思わず唸ってしまったのは、チャップリンがこの映画「ライムライト」を、感傷を入れずに、実に冷静かつ周到に作り上げている点です。
二十歳の時にはわからなかったことが見えてきた。
カルヴェロがテリー励ます時にも、興奮して「人が感動する名言」を叫んでいるのではなく、カルヴェロに、こんなことを喋るなんて、酔い過ぎたかな、というふうにバランスをとりながら、物語を進めているのでした。
温かな心、ゆたかな情感、それだけでなく、怖いくらいに冷静な知性、突き放して見る客観的な視点、をチャップリンは持っていた、だから、永遠の名作と呼ばれる「ライムライト」を撮ることができたのでしょう。
それにしても、チャップリンほど、数多くの名言を遺した映画監督はいませんね。
文学者ではないのに、文学者よりも、言葉を大事にした、言葉に敏感な人、言葉に厳しく、言葉に愛情を注ぎこんだ人、それがチャップリンでした。
その意味で、チャップリンは紛れもなく、天性の詩人でした。
でなければ、あの「独裁者」の演説シーンは絶対に撮れなかったでしょう。