今回は、ポール・ヴェルレーヌの「落葉」という詩をご紹介します。

 

翻訳者によってタイトルが異なり、「落葉」の他に「秋の歌」と「秋の唄」があります。

 

落葉(らくえふ)

(上田敏訳)

 

秋の日の

ヸオロンの

ためいきの

身にしみて

ひたぶるに

うら悲し。

 

鐘のおとに

胸ふたぎ

色かへて

涙ぐむ

過ぎし日の

おもひでや。

 

げにわれは

うらぶれて

こゝかしこ

さだめなく

とび散らふ

落葉(おちば)かな。

 

秋の歌

(堀口大學訳)

 

秋風の

ヴィオロンの

節(ふし)ながき啜泣(すすりなき)

もの憂き哀しみに

わが魂を

痛ましむ。

 

時の鐘

鳴りも出づれば

せつなくも胸せまり

思ひぞ出づる

来(こ)し方に

涙は湧く。

 

落葉ならね

身をば遣(や)る

われも、

かなたこなた

吹きまくれ

逆風(さかかぜ)よ。

 

秋の唄

(金子光晴訳)

 

秋のヴィオロンが

いつまでも

すすりあげてる

身のおきどころのない

さびしい僕には、

ひしひしこたえるよ。

 

鐘が鳴っている

息も止まる程はっとして、

顔蒼ざめて、

僕は、おもいだす

むかしの日のこと。

すると止途(とめど)もない涙だ。

 

つらい風が

僕をさらって、

落葉を追っかけるように、

あっちへ、

こっちへ、

翻弄するがままなのだ。

 

秋の歌

(窪田般彌訳)

 

秋風の

ヴァイオリンの

ながいすすり泣き

単調な

もの悲しさで、

わたしの心を傷つける。

 

時の鐘鳴りひびけば

息つまり

青ざめながら

すぎた日々を

思い出す

そして、眼には涙。

 

いじわるな

風に吹かれて

わたしは飛び舞う

あちらこちらに

枯れはてた

落葉のように。