体言とは名詞や代名詞などのこと。この体言で文を終えることを「体言止め」と呼びます。

 

文章の出来不出来を、プロとアマとで比較しますと、もっとも顕著にあらわれるのが、文章のリズムです。文章を心地よいリズムで書くには、語尾の変化が重要。語尾変化で欠かせないのが、体言止めにほかなりません。

 

要するに、体言止めをつかうと語尾のバリエーションが増え、文章のリズムが良くなるのです。

 

では、さっそく体言止めを、例文で具体的に見ていただきます。

 

私がいちばん好きな花は紫陽花です。梅雨時に気持ちが滅入っていても、この花を見ると、なぜか元気になれます。

 

では、上の文を体言止めを使って書き換えてみましょう。

 

私がいちばん好きな花、それは紫陽花。梅雨時に気持ちが滅入っていても、この花を見ると、なぜか元気になれます。

 

古い文章作法の本を読みますと、「体言止めは使わない方が良い」と書かれている場合があります。

 

使わない方が良い場合も確かにありますが、使った方が良い時もあるのです。

 

Web文章の場合は、体言止めは使わざるを得ません。

 

というのは、ブログに「ですます調」で文章を書く場合、文体を軽妙かつリズミカルに保つためには、1回や2回は、体言止めを使う必要が出てくるからです。

 

「です」と「ます」を交互に繰り返していると、どうしても一本調子になり、リズムが悪くなってしまいます。

 

体言止めを使うべきではないと戒めるのは、体言止めを使いすぎると、文章が軽くなったり、品格が失われることを怖れるからです。

 

しかし、Web文章の場合は、ほどよい軽さは不可欠であり、品格よりも親近感の方を求められるケースが多いので、体言止めは、効果的に使うべきであるというのが私の考え方です。

では以下で、体言止めの長所と短所をまとめてみましょう。

【体言止めの長所】

 

1)簡潔な表現ができる。
2)余韻を残すことができる。
3)イメージの広がりを演出できる。
4)軽妙なリズムを生み出せる。

【体言止めの短所】

 

1)文章が軽くなりすぎる。
2)文章に品格がなくなる怖れがある。
3)使い方を間違えると文章が途切れてしまい、リズムが崩れる。
4)文章の意味が通じにくくなる場合がある。

 

 

要するに、体言止めは、巧みに使いますと効果があがりますが、失敗しますと、目も当てられなくなるのです。

 

それだけに、注意しながら使うべきです。

 

できるだけ使わない方が良いとは申しません。Web文章の場合には、基本的に「軽いリズム感」が求められます。そのためには、体言止めが必要となるので、これを回避せず、上手に使いこなせるようになりましょう。

 

巧みな体言止めを活かした名文が、太宰治の「走れメロス」です。

 

太宰治「走れメロス」の文章力は?

 

天性の感覚で「体言止め」を駆使しています。天才的だと言わざるをえません。