「私を忘れないで」は、2016年の公開された韓国映画。主演はチョン・ウソンだ。
「私の頭の中の消しゴム」でチョン・ウソンが主演したのが2004年だが、当時のチョン・ウソンと今回見た2016年公開の「私を忘れないで」と、それほど変わっていない印象を受けた。
それにしても、チョン・ウソンの演技力がすさまじい。相手役のキム・ハヌルも、繊細な表現力が光っていた。
そして、カメラワーク・音声・セリフなど、すべて質が高く、監督のイ・ユンジョンの手腕も大したものである。
2016年の作品だが、韓国はこの水準の映画をふつうに制作できるのだろうか。突っ込みどころはあるが、面白いし、表現力が豊かなだ。最近の日本映画よりはるかにレベルが高い。
最初の10分間を見ただけで、クオリティの高さを感じ、その信頼感で、最後まで鑑賞できた。
単なる「記憶喪失もの」ではない、プラスαがある。
映画はやはり映像と音が大事だと思った。当たり前だが、最近の日本映画は、最も大切な映像と音が雑過ぎて、最後まで見るのに苦労するくらいだ。
交通事故と記憶喪失というありきたりな設定だが、それでもここまで視聴者を引っ張れるパワーは立派である。
交通事故と記憶喪失という設定をもう少し工夫して、時間の錯綜という技巧をシンプルにし、人間ドラマのテーマを掘り下げたら、さらに素晴らしくなるのだがろう。
しかし、そうするためには、映画作りの姿勢を根本的に変えなければいけなくなるかもしれない。
時系列を錯綜させることで独特の面白味を演出しているのだが、ここまで凝る必要はないと感じた。一つ間違うとゲームのような安っぽさがにじむ。
この作品で視聴者に何を伝えたいか……壁を突き破る手前でテーマの追求が止まっている気がして残念だった。