今回は谷川俊太郎の「かなしみ」という詩をご紹介。
かなしみ
あの青い空の波の音が聞こえるあたりに
何かとんでもないおとし物を
僕はしてきてしまったらしい
透明な過去の駅で
遺失物係の前に立ったら
僕は余計に悲しくなってしまった
私が提唱する「詩心回帰」。そこでは、詩心の役割についてもご説明しています。
忘れかけていた(忘れてしまっていた)大切なことを想い出すこと。
本当の自分に再会すること。本来なりたかった自分になるために必要なことに、気づき、それを取り戻すこと。
それらを、物も見事に、やわらかな言葉で表現しているのが、谷川俊太郎の「かなしみ」です。
極めて大事なことを、忘れていないと生きられない、それが人生だとしたら、あまりに悲しい。
だから、谷川俊太郎は、この詩のタイトルを「かなしみ」としたのでしょうか。
谷川俊太郎の名作詩セレクション