十一人の侍」という映画をご存じだろうか。1967年に東映京都撮影所が製作し、東映が配給している。

 

監督は、工藤栄一。主演は、夏八木勲

 

工藤栄一は大衆向けの娯楽作品を数多く手がけている。テレビの人気番組「必殺シリーズ」にもかかわった。作品として最も評価の高い「必殺仕置人」の演出を担当。

 

「十一人の侍」は、まだ時代劇ファンがたくさんいた頃の作品だ。新しいスタイルの時代劇として案出された「集団抗争時代劇」の代表作とされている。

 

工藤栄一が撮った「集団構想時代劇」には、この他、「十三人の刺客」(1963年)、「大殺陣」(1964年)がある。

 

「十三人の刺客」「大殺人」「十一人の侍」は、ほぼ同じ映画だと言っていいくらい、物語の設定も展開も結末も、すべて酷似している。

 

それにしても、時代劇の層の厚さは、質量ともに素晴らしいものがあった。

 

現代はどうだろう。2022年、まさかこれほどまでに時代劇が衰退するとは、1967年当時は誰も予想しなかったのではないか。

 

インターネットやスマホの普及で、わたしたち日本人の生活スタイルも一変した。

 

これからの日本に時代劇など必要ない、などと考えるだけで、気分が沈みこんでくる。

 

今の日本ほど、古き良きものを大事にしない国はないのではないか。

 

私は決して時代劇のファンではない。ただ、日本に時代劇を愛する人たちが一定程度はいてほしいと切に願っている。

 

「十一人の侍」は、傑作と呼ぶには何かが足りない気はした。しかし、最後まで充分に楽しめるエンターテインメントにはなっている。エンタメ作品としては良質の部類に入ると思う。