ラングストン・ヒューズの「助言」という詩をご紹介しよう。
訳詩は木島始。
助言
みんな、云っとくがな、
生まれるってな、つらいし
死ぬってな、みすぼらしいよ──
んだから、掴(つか)まえろよ
ちっとばかし 愛するってのを
その間にな
Advice
Folk, I'm telling you,
birthing is hard
and dying is mean──
so get yourself
a little loving
in between.
※meanはこの場合は形容詞。「卑劣な、けちな」の意。
「mean」が形容詞として使われる場合、人の性格が卑劣であることや、金銭に対して非常にけちであることを示す。
ラングストン・ヒューズのプロフィール
ラングストン・ヒューズ(Langston Hughes)は、1902年2月1日に生まれ、1967年5月22日に死去。詩・小説・戯曲・短編・コラムなどの分野で活動したアメリカの作家。ハーレム・ルネサンスの指導者とも呼ばれている。
ミズーリ州にて、アフリカ、ユダヤ系、ネイティブ・アメリカンなどが混血した一家に生まれた。幼少期に両親が離婚し、父は人種差別の激しかったアメリカ合衆国を出てキューバ、後にメキシコへ渡る。その後、カンザス州の祖母から黒人の伝統口承文学を多く聴かされ育てられる。
それまでアメリカ白人作家によって描かれてきたアフリカ系アメリカ人の類型的タイプ(ひたすら従順・野蛮で知性に欠ける…)ではなく、黒人自身の視点からブラックアメリカ文化・風俗を提示することにより普遍的人間像を描いた。
ラングストン・ヒューズの詩「助言」の鑑賞
木島始の訳詩がいいですね。このくだけた感じが、なんとも言えない味と親しみを生んでいます。
それと、人生には「愛が大事だ」という主張を大げさに大風呂敷を広げるのではなく、小さく身近なこととして優しく語りかけている点に注目。
壮大な人類愛ではなく、日常的に「a little loving」というふうに小さく語ったことが素晴らしい。
小難しい理屈をこねくりまわしていないことが、詩としての成功を呼び込んでいます。
「Folk」は「皆さん」という呼びかけの言葉ですからね。