今回は菱山修三の代表作である「夜明け」をご紹介する。

 

夜明け

 

私は遅刻する。世の中の鐘がなつてしまつたあとで、私は到著(たうちゃく)する。私は既に負傷してゐる。

 

菱山 修三(ひしやま しゅうぞう)は、1909年8月28日に生まれ、1967年8月7日に死去した日本の詩人。

 

この「夜明け」という詩は、詩集「断崖」の冒頭に収められている。

 

「夜明け」について、解説の必要はあるまい。

 

私は中学生の頃、自分の遅刻癖に悩まされた。ほとんど病気と言いたくなるほど……どうしても、毎日のように遅刻してしまうのである。

 

遅刻は、自分の心を痛めつける行為だ。菱山修三は「世の中」という言葉を使ってくれたが、「この世界」と私は言いたいくらい、この世のすべてから取り残されたような疎外感を味わったものだった。

 

周囲と同じ行動をとること、レールの上を走り続けることは、何と安楽で幸福なことか。

 

また、それは同時に、実に空しく不幸なことである。

 

当然のことながら、菱山修三も、人生における「遅刻の常習犯」であったろう。

 

いや、詩人と呼ばれる者は、全員が「遅刻の常習犯」に違いない。

 

私は詩を書くのをやめてから「常習犯」ではなくなった。

 

しかし、また最近、「再犯者」になりつつあるようだ。ある意味、良い傾向だと思っている。