Warning: Undefined variable $show_stats in /home/kazahana/kazahanamirai.com/public_html/wp-content/plugins/stats/stats.php on line 1384

映画「キスト」の感想。

今日取り上げる映画は「キスト」。ご存知だろうか?

1996年カナダ映画。79分。監督:リン・ストップケウィッチ。出演:モリー・パーカーピーター・アウターブリッジほか。

いい映画だ。ハリウッドの商業映画ばかり見ているせいか、新鮮だった。

ピュアと言っていい仕上がりである。おどろおどろしいテーマをポエティックに描いている。美に昇華された心地よい映像がそこにあった。

死体愛好家とか死姦とかいうと、どうしてもグロテスクな感じがしてしまうが、この作品に不快感はない。

美貌で幻想的な主人公を演じる女優がはまり役だったみたいだ。

この映画で不思議な経験をした。もうとうに忘れてしまっていた感覚を呼び戻してくれた。それは、映画の主人公に恋してしまうことだ。

この女優は魅力的だ。繊細で大胆で、凛とした品格がある。

幼い頃に抱いていた女性へのほのかな憧れの気持ちを蘇らせてくれた。それだけでも、この映画を見た甲斐があった。変だろうか。

ボーイフレンドが首吊り自殺という設定だけは失敗だろう。物語のリアリティが損なわれてしまった。

首吊り自殺の死体は見るも無惨だと聞く。それと美しいセックスはありえないだろう。全く残念だ。

ともあれ、この映画は映像詩と呼んでもおかしくない完成度を有していることだけは間違いない。

最後に一言。まだ描き残された世界は残っていることを、この映画は教えてくれている。この新鮮な驚きこそ、優れた表現だけが与えてくれる勇気なのだ。諦めては駄目だ。

映画「邪魔者は殺せ」を見て、キャロル・リードはヒッチコックと正反対の監督だと感じた。

これまで数多くの映画を見てきたが、その中で最も感動した映画の一つ、それが、キャロル・リード監督の「邪魔者は殺せ」。「殺せ」は「けせ」と読む。

 

1947年イギリス映画。監督:キャロルリード。原作:F・L・グリーン。出演:ジェームズ・メイスン、キャサリン・ライアンほか。

 

映画を評価する時、私は自分なりの基準を持っている。「酔える、痺れる、体の芯が熱くなる」というのがあるが、これは滅多にない。

 

その意味でいうなら、この映画は最高ランクに属する。なぜなら、何度見ても体の芯が焼けるようになる稀有な作品だからだ。

 

「邪魔者は殺せ」は、ジャンルで言うならばサスペンス映画である。サスペンスと言えば、あのヒッチコックが頭に浮かぶ。

 

二人の巨匠を比べてみると見えてくるものがある。

この記事の続きを読む

スタンリー・キューブリックの映画「シャイニング」を見た感想。

先日、友人と電話で話していて、この映画のことに触れた。異常なほど口うるさい人間だが、彼もこの作品が好きなようだ。

 

その映画とは「シャイニング」。

 

「シャイニング」。1980年アメリカ映画。監督・脚本:スタンリー・キューブリック。主演:ジャック・ニコルソン。原作はスティーヴン・キングの同名小説。

 

どこから、こう強い力が湧いていくのかをしばらく考えていた。

 

演出の巧さ、映像の鮮明度、ジャック・ニコルソンの演技力など、いろいろな要素が思い浮かぶ。

 

もちろん、エンタテイメントの基本に忠実なのは当然で、ファーストシーンからラストシーンまで、見る者を離さないための周到な努力がはらわれている。だが、どれも決め手とは言えないようだ。

 

自分の中で名作と呼ばれる、映画・小説・音楽・彫刻・絵画などを思い浮かべてみる。すると、一つのことに思い当たった。

 

単純であること。

 

この映画の魅力は、やはりその驚くほどのシンプルさにあるのではないか。

 

テーマがはっきりしていて、それを効果的に伝えるにはどうしたらいいか。

 

そのためにキューブリックは最善を尽くしているだけだ。やらなければいけないことは山ほどあるが、後は粘り強く働くしかない。

 

単純な人物ほど恐ろしいと人はしばしば口にする。その意味は深い。

 

単純ということは逃げないということ、逃げ場を自ら放棄することだ。

 

運命とか使命とかに、愚直なほどに誠実で、わき目もふらずに地獄へ転げ落ちてゆく。或いは栄光をつかむ。人の行けそうにない深世界へも降られる。

 

何かを信じないと、実は何も得られない。感動することも、恐がることもできない。

 

恐怖とは想像力だと誰かが言ったらしい。確かにそうだが、もっと直接的に表現するなら「そこに異常な自分を発見し、それを一瞬のうちに確信してしまうこと」ではないのか。

 

そんなふうに「シャイニング」を見て強く思った。

この記事の続きを読む