今回取り上げる小説は、スティーヴン・キングの「デッド・ゾーン」です。
映画の「デッド・ゾーン」については、以前、このブログで感想を書いたことがあります。
小説「デッド・ゾーン」の読後の感想
第一部、第二部と分かれているが、第一部の方が圧倒的に面白かった。いつも思うのだが、後半になって失速する小説は評価しがたい。
キングはどうしてしまったんだろうと思うくらい、後半になって力が衰える。
第一部と第二部の一部分を合併して一部構成にした方がいいだろう。それにしても、キングはなぜ第二部を、これほどダラダラ書いてしまったのか理解に苦しむのである。
ジョンとスティルソンの対決させ方も盛り上がりに欠けた。
スティルソンが大統領になり、暴政を働く、だから彼を殺さなければならない。この動機設定が失敗だとは言わないまでも、二人の対決は第一部のそれをはるかに凌ぐものでなければならない。
だが、小説はそうなってはいない。第一部は非常に優れている。こういう書き方があるのかと、驚愕するシーンがいくつもあった。それだけに、第二部の失速は残念だ。
以下は詳しい分析です。未完です。
小説「デッド・ゾーン」の構成の検証
●プロローグ
1)書き出しの巧さ。1953年1月。年号と月を入れる。時代背景と時間の流れを読者にわかりやすく告げる。
重大なエピソードから入る。静かな感じで語りはじめる。
ジョン・スミス(主人公)を登場させる。氷上で気絶。「黒い幕。黒い氷。黒」。イメージを提出。
予感⇒超能力の前兆。
二度目の事故。運命の車の出来事。予告編の役割。読者の心をつかむ。
21955年夏。グレグ・スティルソンの登場。場面を移して、彼の視点で語る。
自由な視点移動は、この小説の特徴の一つ。
彼の凶暴性を見せる。犬を蹴り殺すという行為で語る。読者にスミスの敵となる男を強烈に印象づける。
人物造形の綿密さ。
●第一部 運命の車
●第一章
1)書き出しの巧さ。印象的なイメージを回想として語る手法。これは名人芸。下手に真似ると失敗しそうだ。
セーラを登場させる。主人公の愛した女。彼女の視点で書く。
1970年10月末。
ジョンの人物造形をセーラの視点で描写。
事故前の平凡な日常を描く。これが、後で効いて来る。
二人の関係をさり気なく語る。肉体関係もない状態。
2)フェア会場に出かける前の二人。
3)フェア会場で遊ぶ二人。何かが起きる予感。
4)<運命の車>。勝ちまくるジョン。セーラの下痢が効いている。極端な幸運は不幸の前兆。
●第二章
1)セーラを自宅まで送るジョン。そこで自分の不幸を予感。事故を予知。セーラとジョンとの運命。結ばれずに別れる。
2)不幸の前兆。不安感。胸騒ぎを畳みかける。交通事故。アクションシーンの巧さ。
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