風花未来が大学在学中に書いた詩を「風花未来の初期詩篇」と呼ぶ。
今回は、その1作目のご紹介となる。
その詩のタイトルは「黄金の夜明け」。当初は「曙光」としていたが、詩の内容とそぐわないので「黄金の夜明け」と改題した。
黄金の夜明け
天は重く
地は嘆いていた
非情の闇は深く果てしなく
夜の沈黙(しじま)が
世界を凍らせていた
俺は何者かの無言の指令に従うように
広大な暗黒の地平を眺め入り
我を忘れていた
次第にこの胸は怪しく高鳴り
五体はついに激しく打ち震えだした
その時
天は裂けた
悪魔の雲 見る間に流れ去り
地に歓喜の一声こだましたかと思えば
巨大な太陽 姿あらわし
世界を一瞬のうちに黄金色に染め変えた
俺は歯を食いしばり
拳(こぶし)を握りしめ
溢れんばかりの歓び 胸に満たし
黄金の浄(きよ)めを全身に浴びて
大地に独り立ち尽くしていた
遠い昔のことだが、私の大学時代は、ただ一言、辛かった。
肉体的にも、精神的にも、限界に達していたと思う。
しかし、心身ともに、重い病にかかったわけではなかった。若さ、当時の生命力が、極限状況においても、私自身が倒れることを防御してくれていたのだろう。
ただ、とにかく、限界的な状況であり、大学は中退せざるを得なかった。
では、この辛すぎた大学時代が無駄だったかというと、決してそうではない。
これまで私が曲がりなりにも、生きてこれた、生活をささえた「発想力」「集中力」「表現力」の基礎が、この大学時代に養われたことは間違いない。
辛すぎたため、大学時代に書いたもの、それだけでなく、大学時代の記憶さえも、これまで完全に封印してきたが、余命3ヶ月の宣告を受けたために、このタイミングで、その封印を解いた次第である。
だが、持ち前の生命力で病に倒れなかったのは、この時だけであり、その後、10年おきに大病に苦しむことになる……。