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蒼と白の祈り~風花未来の詩10

背中の痛みに耐えているとき、ふと詩想がわいたので、書きとめておこう。

 

蒼と白の祈り

 

小指の先ほどのごく小さい花が
歩道のコンクリートの裂け目から
咲き出ている。

 

真っ蒼な空の蒼をせいいっぱい吸いこみ
空に浮かんだ雲と同じ純白の十字架を抱きしめ
小さな花は黙って空を見つめている。

 

この小さな花の存在を
初めて私に教えてくれた人が
かつては私のすぐそばにいた。

 

その人は私に次の一言だけを残し
私の眼の前から、突然かき消えた。

 

「世界中で、あなたのことを一番愛している」

 

いまここに咲いている花にかわって
澄み渡った空にむかい

しずかに蒼と白の祈りをささげよう。

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大手拓次「藍色の蟇」

大手拓次の「藍色の蟇(ひき)」という詩をご紹介。

 

藍色の蟇

 

大手拓次

 

森の宝庫の寝間ねま

藍色の蟇は黄色い息をはいて

陰湿の暗い暖炉のなかにひとつの絵模様をかく。

太陽の隠し子のやうにひよわの少年は

美しい葡萄のやうな眼をもつて、

行くよ、行くよ、いさましげに、

空想の猟人かりうどはやはらかいカンガルウの編靴あみぐつに。

 

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原民喜「青空の梯子」

原民喜の「青空の梯子」という詩をご紹介。

 

青空の梯子

原民喜

 

二階の窓に桜の葉が繁って、彼は中学を休んだ。曇った朝の空が葉のむかふにあった。雀が囀った。

 

怠けものはさきになって困るぞ、と誰も云はないが云ふ。それがちりちりと迫った。

彼は左官になって一生懸命高い梯子を登り降りする姿を夢みた。懐中時計の字のない部分は白かった。

正午前である。空がすっかり晴れて来た。

 

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