「美しい日本語」というカテゴリを設けたのですが、なかなか記事が書けませんでした。

 

「美しい日本語」に関する本は多数出版されていますし、そういうネタ本から引っ張り出せば、容易に書けるでしょう。しかし、それでは味気ないし、気が乗りません。

 

そこで、今回は私自身が思い入れのある「美しい日本語」をご紹介しましょう。

 

それは「たゆたう」です。

 

大辞林は「たゆたう」を以下のように説明しています。

 

(1)物がゆらゆら動いて定まらない。ただよう。

 

「波間に―・う小舟」

 

(2)心が動揺する。ためらう。

 

「父はあまりの事に、しばし―・ひしが/うたかたの記(鴎外)」「今は逢はじと―・ひぬらし/万葉542」

 

〔終止形・連体形は「たゆとう」とも発音される〕

 

「たゆたう」を現在、「ためらう」という意味で使う人はまれだと思います。

 

私の場合は、「ゆらゆらと漂っている」という意味で、ある状態を表現したいのです。

 

例えば、「たゆたう時を、しばし味わう」とか。

 

効率化を追い求めるあまり、日常では、何の目的も持たない、ぼんやりとした時間が極めて少ないのです。そうした慌ただしい日々の中で、ゆらゆらと揺れている、ふんわりとした時間を味わうことは、かなり贅沢な楽しみだと感じます。そこで「楽しみ」ではなく、「愉しみ」と表記したいのです。

 

「たゆたう時を愉しむ」と書くと、私的には、しっくりくるのですが、いかがでしょうか。

 

美しい日本語は、骨董品のように飾っておくのではなく、日常から積極的に使いたいものですね。

 

今後、ご紹介する日本語も、その使い方についても、ごいっしょに考えてゆきましょう。