溝口健二監督の映画「祇園囃子」を初めて鑑賞した。
「祇園囃子」(ぎおんばやし)は、1953年に公開された日本映画。
理屈は不要である。主演の小暮美千代が素晴らしい。哀しき気品を全身から匂い立つようだ。
若い若尾文子がかすむほどの美しさを、小暮美千代から感じるとは、思いもしなかった。
名匠として評価の高い溝口健二監督だが、私はそれほど見ていない。
「雨月物語」「近松物語」には感服したが、その他の作品で、特別記憶に残っている者はなかった。
今回「祇園囃子」と見て、これからは少しずつ、溝口作品を鑑賞してゆこうと思った。
溝口監督が描き出した美の世界は、そのほとんどが今の日本では消滅してしまっただろう。
「祇園囃子」の世界に帰る術はない。また帰る必要もないかもしれない。
ただ、この映画の中に息づく、確かな美意識、情感などを失ってはならない、日本人として。
この美意識、情感などを、これからの暮らしに活かしてゆこうと、真剣に思うのである。