文章を書いている時に、この言葉は漢字にするべきか、平仮名(ひらがな)で書いた方が良いのか、迷うことがありますよね。

 

私がライターになりたての頃、上司に「漢字にするか、ひらがなにするか、迷ったら、ひらがなで書け」と教えられました。

 

本を読むことが好きで、古典とか、古い名作などを好む人が書く文章は、漢字が多いものです。もちろん、少し勉強して、漢字が多い文章は、読者に視覚的な威圧感を与えてしまうので、良くないということを知れば、意識的に漢字を少なく書くようになります。

 

漢字はできるかぎり、ひらがなに開くのが基本。もちろん、ひらがなばかりでは、逆に意味をとりにくくなりますので、そこはバランス感覚をはたらかせてください。

 

有名な作家の文章を読みますと、川端康成の文章には漢字が驚くほど少ないですが、これは例外中の例外。三島由紀夫でも漢字は多いのですね。近代文学の名作を今になって読み返しますと、漢字が多いという点で、少し違和感を覚えます。

 

以下、漢字をひらがなにした方が良いと思われる例をあげてみます。

 

 

然し→しかし 但し→ただし 予め→あらかじめ 概ね→おおむね

更に→さらに 何故→なぜ 且つ→かつ 様々→さまざま

色々な→いろいろな 内に→うちに 既に→すでに 為に→ために

或いは→あるいは 暫く→しばらく 丁度→ちょうど

 

 

しかし、漢字はできるかぎり、ひらがなにした方が良いと教えられても、不安は残ります。もっと明確なルールがあることを知れば、迷いはさらに少なくなるでしょう。

漢字を使わないで、ひらがなしなければいけない(ひらがなにしたほうが良い)という厳格なルールはありませんが、基本的な規則は存在します。それについて、以下、述べてみますね。

 

漢字が持つ本来の意味として使わない場合には、ひらがなにする。

 

 

×良く行く店

○よく行く店

 

 

「良く行く店」と書くより、「よく行く店」と書くべきです。なぜなら、この場合の「よく」は「しばしば」「ひんぱんに」の意味で、「良い」「悪い」の「よく」ではないからです。

 

 

×小学生の頃は、休日にはサイクリングに出かけた物だ。

○小学生の頃は、休日にはサイクリングに出かけたものだ。

 

 

「小学生の頃は、休日にはサイクリングに出かけた物だ」と書くより、「小学生の頃は、休日にはサイクリングに出かけたものだ」と書くべきです。

 

なぜなら、この場合の「もの」は、物体を意味する名詞ではなく、「過去にしばしば起こったこと」を意味する形容名詞だからです。

 

 

×この世には完全無欠の人間と言うものは存在しない。

○この世には完全無欠の人間というものは存在しない。

 

 

この場合の「いう」は口に出して「言う」という意味ではないからです。

 

その他、以下の場合も、漢字ではなく、ひらがなにしてください。

 

 

×やって見たら、面白かった。

○やってみたら、面白かった。

 

×もちろん、彼は合格だと言いたい所だけれど

○もちろん、彼は合格だと言いたいところだけれど

 

×中途半端でやめるならば、何もしなかったのと同じ事になる。

○中途半端でやめるながら、何もしなかったのと同じことになる。

 

 

この場合の「こと」は、「事件」「重大事」という意味の名詞ではなく、成り行きや結果をあらわす形容名詞であるため「事」とは書かないのが普通です。

 

以上のように、その漢字が持つ、本来の意味から離れて使う場合には、平仮名(ひらがな)にすべきなのです。