浦山桐郎という映画監督をご存じだろうか。今日取り上げる映画は浦山桐郎が監督を担当した。
「キューポラのある街」は、吉永小百合の代表作としても有名である。1962年(昭和37年)4月8日に公開された。
原作は早船ちよの同名の小説である。
この時代の日本は実に貧しく、暗かったということに、思い知らされる。
貧しさへの免疫のない人は、あまりの衝撃で打ちのめされてしまわないか心配だ。
過酷な運命に負けてしまう人たちも少なくなかっただろうと思うのだが、主人公の中学生を演じる吉永小百合は、前向きに運命を切り開こうとする。
吉永小百合の健気な姿、透明な生命感がなかったら、陰惨で最後まで見られない映画になっていたかもしれない。
私自身、辛すぎるシーンに負けそうになり、途中で挫折しそうになった。しかし、最後まで鑑賞できたのは、映画監督の確かな手腕、前向きなストーリー、吉永小百合を含む幼い登場人物たちのはじけんばかりの生命力のおかげである。
この「キューポラのある街」は、数々の賞を受賞しているが、それもなるほどと頷けるだけの映画作品としての質の高さを示している。
今では考えられないような貧しい家庭環境が描かれており、また戦争や民族問題も含まれるだけに、若い人たちがこの「キューポラのある街」を客観的に評価することは難しいかもしれない。
人生肯定と人間愛の映画だ。どうか、虚心で鑑賞していただき、多くの人に語り継いでほしい作品である。