久しぶりの新藤兼人監督の映画を観た。偶然、アマゾンプライムで見つけたからだ。
タイトルは「銀心中」。「しろがねしんじゅう」と読む。
「銀心中」は、1956年に日本で公開された映画。新藤兼人が監督と脚本を担当している。原作は田宮虎彦の同名の小説である。
出演者は、新藤兼人映画の常連である、音羽信子と宇野重吉。準主役である長門裕之は新藤作品では初めて観た。
激しい恋愛葛藤劇だ。メロドラマというには激し過ぎる。
成瀬巳喜男監督に、加山雄三と高峰秀子が逃避行する恋愛映画「乱れる」があるが、それを想起した。
だが、「乱れる」よりも、「銀心中」の方が激烈だ。
また時代背景として、戦争がもたらした不幸であることも重要な要素となっている。
人物配置とキャラクター造形が、少々荒っぽいが、そこが新藤兼人らしい。
成瀬巳喜男のような繊細さ、きめ細やかさには欠けているが、逆に激しい人間の懊悩が鮮烈にあらわれている。
狂うほどの激しい恋愛を、雪景色も鎮める力はなかった。もうこういう激烈な恋愛劇は、誰も描き出せないのではないか。
戦争が終わって16年目に作られた映画だが、余りにも暗く不幸過ぎる恋愛劇を、新藤兼人はどうして描かないではいられなかったのか。
そのことが、妙に胸につかえている。