今回は田中克己(たなかかつみ)の短歌をご紹介。

 

「詩集西康省」の序の歌

 

この道を泣きつつ我の行きしこと

我がわすれなばたれか知るらむ

 

この短歌は予備知識は一切必要ない。

 

私自身、大学生時代に読んで、「良い歌だなあ」と感じ、何十年も経ったにもかかわらず、忘れないでいた。

 

そして、今回、再読して、やはり「良い歌だなあ」と感じた。それだけで充分ではないだろうか。

 

解説の尾ひれはひれは要るまい。

 

ただ、今回は記事にするにあたって、少しだけ田中克己について調べたので、参考までに最小限のデータを記しておく。

 

田中克己、1911年(明治44年)8月31日に生まれ、1992年(平成4年)1月15日)に死去。日本の詩人・東洋史学者。

 

今回ご紹介した「この道を泣きつつ我の行きしこと 我がわすれなばたれか知るらむ」は、田中克己が高校三年生の時に書いた短歌である。

 

私が大学生の時に初めて読んで「これは青春の愛唱歌だろう」と直感したのだが、やはり田中克己は高校生に詠んでいたのだった。

 

石川啄木や若山牧水にも通じるセンチメンタリズムが、この歌には脈打っている。

 

というか、啄木や牧水とは関係なく、自我に目覚め、挫折した経験を持つ者ならば、誰でも共感できる、親和性(親しみやすさ)が、長きに渡り愛唱されてきた所以であろう。

 

田中克己は自身の第一詩集である「詩集西康省」の序に「この道を泣きつつ我の行きしこと 我がわすれなばたれか知るらむ」を記載した。

 

「詩集西康省」が発表されたのは、1938年(昭和13年10月1日)である。