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映画「64-ロクヨン」は佐藤浩市と永瀬正敏の熱演がもったいない。

映画「64-ロクヨン」の前編(1時間59分)と後編(1時間58分)の両方を一気にアマゾンプライムで見ました。

約4時間の大作でしたが、最後まで楽しむことができました。

ただ、その理由が問題なのだと思います。

約4時間の大作を最後まで見ることができた最大の理由は、佐藤浩市永瀬正敏の熱演のパワーです。

その他の役者たちも自分の役回りをしっかりと演じていて、俳優陣の演技力にはほとんど問題はありませんでした。

問題は、作品としての完成度、質が高いか低いかです。

映画作品としては、非常にバランスが悪くなっています。佐藤浩市の演技は喝采に価するのに、脚本に問題があります。

原作となった小説は読んでいませんが、横山秀夫といえば、警察小説を得意とする小説家として知られています。短編小説はほとんど読みました。長編では「クライマーズ・ハイ」と「半落ち」を読了。

正直、好きな作家の一人です。ただ、それは自分の好みとして読むのであって、作品としての価値には問題があることを承知しています。

横山秀夫の最大の弱点は、テーマ自体に対した価値がない場合があることです。警察とか新聞社とかいう組織が描かれますが、そういうものに興味がない人の心をも動かす普遍的な力は、残念ながら横山秀夫の小説は充分あるとは言えません。

そこに浮き出された人生模様が、もん切り型、浪花節ふうというか、ありきたりな古びた、現代の価値観とはズレた場合が多いのです。

欠点があと2つあります。長編になると、各段に質が下がること。そして、描く女性が類型的で現実的ではなく、心理のあぶり出しも甘いこと。

以上の3つの弱点が、映画「64-ロクヨン」に出てしまっていると強く感じました。

テーマの軸が弱い。

テーマの軸が弱いでしょう。本当に描きたいものが定まっていないので、いろんな要素を入れるようになりますが、その結果、すべてが中途半端に終わってしまっています。

組織の腐敗を徹底的に浮き彫りにすることなのか、犯行に巻き込まれた人々の心理なのか、家族愛か、人と人との絆なのか……何かをしっかりと軸に据えないと、見終った後にストレスが残ります。逆にカタルシスが弱くなるのです。

長いことがプラスに働いていない。

せっかく4時間もの長さがあるのならば、本当に描き方ことをもっと深めたら良かったのに、たくさん入れ込みすぎて、最後は消化不良におちいっていますね。

全体のこのクオリティーならば、2時間でもかまいません。長くすることで価値を高めようとしてのでしょうけれど、その意図は達成されていませんでした。

女性の描き方で際立ったところがない。

女優さんの問題ではなく、脚本、演出、両面で女性の描き方が、極端に作品として劣っています。女性の描き方が劣悪であるとが、この映画に「どこか嘘っぽい」「お涙ちょうだいになってない?」といった安っぽさ、薄っぺらさが感じられてしまうのかもしれません。

刑事の妻、誘拐された母親、犯人の妻も、すべて泣いたり、おろおろしたりしているだけですが、もう少し違う面も描けると思うし、描いてほしかったです。

この点は、原作を大幅に変えてしまっても良いですし……。

佐藤浩市を文句なしの傑作に出演させたい。

この「64-ロクヨン」は、一言で評価するなら、非常に残念な映画です。

良いところは、部分的にはたくさんありました。特に役者たちの頑張りには敬服します。

昔ほど映画監督の力は絶対的ではないでしょうけれど、結果として、映画監督の力量不足だとしか言いようがありません。

例えば、野村芳太郎監督の「砂の器」と比較すれば、その差は歴然です。名作と比べれば、その域に達しない作品の弱点が見えてきます。

最後に一言だけ。

佐藤浩市という役者の悲運です。出演作品の数も多いので、佐藤浩市の出ている映画をこれまで何本見てきたことか。

いずれも、佐藤浩市は熱演しています。しかし、作品に恵まれていないのです。

それほどでもない作品を佐藤浩市の演技力で水準を引き上げているのであって、作品自体の凄さが、佐藤浩市の潜在能力を引き出したという事件には一度も遭遇していません。

何とか、佐藤浩市を傑作と呼ばれるにふさわしい価値ある映画作品に出演させたい、そう切に願います。

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