「生きとし生けるもの」は、1955年に公開された西河克己監督の日本映画である。
原作は1926年朝日新聞に連載された、山本有三の未完の同名小説。
恋愛を織り交ぜたヒューマンドラマなのかなと思って観ていたが、後半から終盤にかけて、凄い映画になってくる。
これはもう、名作映画として賞賛するしかない、と観念した。というか、こういう映画を名作として語り継ぐべきである。
主な出演者は以下のとおり。豪華キャストである。
三國連太郎 - 伊佐早靖一郎
南寿美子 - 菅沼民子
山村聡 - 曾根周作
山内明 - 曾根夏樹
東谷暎子 - 香取あき子
轟夕起子 - 南ゆき子
三島耕 - 伊佐早令二
村瀬幸子 - 母さと
北原三枝 - 八代恵美
笠智衆 - 遠藤老人
主演は三國連太郎と南寿美子だ。前半は恋愛映画だが、後半は人間成長劇となっている。
山村聡と笠智衆が効いていた。この二人がいなければ、この映画は成立しない。
原作は山本有三の小説だということだが、もうほとんど誰にも読まれない作家になってしまった気がする。
最も有名な「真実一路」を読み返してみようかとも思うのだが、失望したら怖いのでやめておいたほうがいいかもしれない。
日活の青春映画を数多い手がけた西河克己が監督をしたが、木下恵介か成瀬巳喜男が監督だったら、とふと思った。
文芸作品らしい、深みのある映画になった気はするけれども、この作品も立派な傑作と呼ばれる価値はある。
その理由は、西河克己監督の「しあわせはどこに」(1956年)を観れば納得するだろう。
西河克己監督は、もともとは文芸作品に向いている人なのだ。それなのに、時代の要請から、エンターテインメントの高い青春映画を多く撮ったのだと思う。
西河克己監督に、思う存分、芸術性を追求した作品を撮らせたかったと、惜しい気がしてならない。