市川雷蔵が主演した映画「鯉名の銀平(こいなのぎんぺい)」を鑑賞。
1961年に公開された映画だが、実に日本人に合った良質なエンターテイメント作品となっている。
監督は田中徳三。主な出演は市川雷蔵のほかに、中村玉緒の熱演が光る。
この「鯉名の銀平」は大映の配給だが、後に無数につくられることになる、東映のヤクザ映画シリーズのような病んだ世界とは異なる、健全なヒーロー像が描出されていた。
長谷川伸の戯曲をもとにした、いわゆる「股旅もの時代劇」である。
風花未来ブログでは、すでに長谷川伸の戯曲を原作とした映画は「中山七里」をレビューしている。
まだレビューはできていないのだが、1961年に公開された映画「沓掛時次郎(くつかけときじろう)」も見て損はない、長谷川伸の古典的な名作である。
ありがちな時代劇と侮るなかれ!
なかなか、どうして、完成度は高く、作品に没入してしまうほど面白い。
エンタメ作品では、必ずといっていいほど、ヒーローが登場するが、「鯉名の銀平」の銀平は、日本人らしい典型的な英雄である。
愛する女のために、命をはる、喧嘩はめっぽう強く、人情にあつい男の中の男。
しかも、演ずるのは市川雷蔵だから、強いだけでなく、美しく、表情は陰影に富んでおり、安っぽい娯楽作品をこえた質の高さを有している。
この手の古典的なエンタメ映画は、もはや古いのだが、若い人たちの中から、昭和歌謡を見直す人が増えていると聞くが、若い人にぜひ「時代劇の復活」を叫んでほしいものだ。
特に「股旅時代劇」の人気復活を希望したい。
市川雷蔵が主演した長谷川伸の戯曲を原作とする「股旅時代劇」は「中山七里」「沓掛時次郎」「鯉名の銀平」(市川雷蔵の股旅三部作)があるが、映画作品として「中山七里」が最も優れているのではないだろうか。
その理由は、単なる時代劇をこえて、文芸作品の匂いがする「心理劇」としても成立しているからだ。