詩を作ることが日常だったことが、かつてありました。それは遠い過去となりましたが、詩想が湧くことはあり、それをスルーすることなく、素直に書きとめてゆけたらと思っています。
そのような無理をしないスタンスで書いた、一作目が今回の詩です。
求めていよう
求めていなければ、とふと思った。
求めていなければ、二十歳の頃、あの駅のホームから見上げた、薄紫の空の滲みに、心がうるみはしなかったのではないか。求めていたからこそ、病に倒れていた時、一輪の花に見つめられていると気づいたのだろう。
求めても、求めても、オリンピックで金メダルはとれないだろうけれど、巨万の富は得られないだろうけれど、愛した人に自分の愛を受け止めれもらえないかもしれないけれど、求めていれば、求めていて、その上で、何らかの行いをしていれば、この世のすべてに、無視されたりはしない、とは言い切れる気がする。
まえぶれもなく、空は淡い光を放ち、温かい色に染まってくれるだろう。未来が感じられる懐かしい歌が、聞こえてくる気がしてならない。帽子が飛びそうなほどの透き通った風が、いつか、きっと吹いてくるに違いない。
だから、求めていよう。そして、派手なことでなくても、何かしら確かないとなみを続けていよう。すぐに大きな変化が見えてこなくても、なごやかな気持ちで、静かに今を呼吸していよう。