山田太一ドラマ「岸辺のアルバム」、そのエンディングの美学…

山田太一ドラマの傑作中の傑作「岸辺のアルバム」を、最後まで鑑賞した。

 

これが2回目だ。1回目から10年以上が経過していたが、今回の方が感動は大きかった。

 

今回は、その最終話について、書きとめておくことにする。

 

エンディングの素晴らしさ。

 

このラストシーンは、よほどの力量がないと描けない。

 

余韻、余白、余情といった美学を体得した作家でないかぎり、このエンディングは演出できない。

 

全部で15話。

 

実に多くのことがあった。

 

その事件のどれもこれもが、リアリティがあった。

 

ドラマを鑑賞した私自身の人生と変わらぬリアリティがあった。

 

山田太一のドラマは厳しい。

 

時には、実人生よりも厳しいのだ。

 

現実の方が、もっと山田太一ドラマよりは、甘く、優しい気がする。

 

現実の方が、いい加減にやり過ごせる時が多いだろう。

 

だが、山田太一は、妥協しない。登場人物をとことん追い詰める。

 

修羅場から逃がさない。困難から逃避させんない。

 

困難な現実と正面衝突させる。

 

そこに紛れもないドラマが生まれるのだが、あまりのも切羽詰まっていて、見ているだけで疲れてしまうのだ。

 

それにしても、「岸辺のアルバム」のラストは良かった。

 

エンディングの美学、ここに極まれり、と言いたい。

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黒田三郎の詩「僕はまるでちがって」

今回ご紹介するのは、黒田三郎の「僕はまるでちがって」という詩です。

 

山田太一ドラマ「悲しくてやりきれない」の中で(全文が紹介されるわけではないのですが)、非常に効果的に使われています。

 

ここでは、全文を引用してみましょう。

 

僕はまるでちがって

 

僕はまるでちがってしまったのだ

なるほど僕は昨日と同じネクタイをして

昨日と同じように貧乏で

昨日と同じように何も取柄がない

それでも僕はまるでちがってしまったのだ

なるほど僕は昨日と同じ服を着て

昨日と同じように飲んだくれで

昨日と同じように不器用にこの世に生きている

それでも僕はまるでちがってしまったのだ

ああ

薄笑いやニヤニヤ笑い

口をゆがめた笑いや馬鹿笑いのなかで

僕はじっと眼をつぶる

すると

僕のなかを明日の方へとぶ

白い美しい蝶がいるのだ

 

黒田三郎の「ひとりの女に」という詩集の中に収録されているそうです。

 

柄本明はドラマ中で、名取裕子に、あなたと出逢って僕はまるで違ってしまった、というふうなことを言うのですが、そのタイミングが、唐突であり、絶妙なのでした。

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「男たちの旅路」第3部 第3話「別離」

ウィキペディアには「男たちの旅路」について、以下のような記述がある。

 

『男たちの旅路』(おとこたちのたびじ)は、1976年2月から1982年2月までNHKにて放映された山田太一脚本のテレビドラマ。全13話。

 

全部で13話あるということだが、改めて確認したが、私はすべて視聴していた。

 

一話残らず、全部を風花未来は見終わっていた。

 

で、今夜、鑑賞したのは、第三部の最終話「別離」だ。

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