今回ご紹介するのは、黒田三郎の「僕はまるでちがって」という詩です。

 

山田太一ドラマ「悲しくてやりきれない」の中で(全文が紹介されるわけではないのですが)、非常に効果的に使われています。

 

ここでは、全文を引用してみましょう。

 

僕はまるでちがって

 

僕はまるでちがってしまったのだ

なるほど僕は昨日と同じネクタイをして

昨日と同じように貧乏で

昨日と同じように何も取柄がない

それでも僕はまるでちがってしまったのだ

なるほど僕は昨日と同じ服を着て

昨日と同じように飲んだくれで

昨日と同じように不器用にこの世に生きている

それでも僕はまるでちがってしまったのだ

ああ

薄笑いやニヤニヤ笑い

口をゆがめた笑いや馬鹿笑いのなかで

僕はじっと眼をつぶる

すると

僕のなかを明日の方へとぶ

白い美しい蝶がいるのだ

 

黒田三郎の「ひとりの女に」という詩集の中に収録されているそうです。

 

柄本明はドラマ中で、名取裕子に、あなたと出逢って僕はまるで違ってしまった、というふうなことを言うのですが、そのタイミングが、唐突であり、絶妙なのでした。