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以前、当ブログ「美しい言葉」で「美しい日本語ベスト10」という記事を投稿したことがあります。
上のリンク先の結果は、NHKのアンケートによるものです。
今回は、私が選んだ「日本一美しい日本語」をご紹介しましょう。
美しい日本語の第一位は「おかあさん」に決定。
以下の言葉を「日本一美しい日本語」に選定しました。
「おかあさん」は日本一美しい日本語である。
「おかあさん」が、日本一美しい日本語だ、と私はここで言い切りたい。
一つの言葉を選ぶ必要はありませんが、「おかあさん」という日本語を大事にしてゆこう、守ってゆこう、という主張を聞いたことがないので、あえて「おかあさん」を日本一美しい日本語に決めてみました。
「おかあさん」は「お母さん」とも書きます。
「おかあさん」と言いますと、普通は子供が母親を呼ぶ言葉だと思うでしょう。ところが実は、「おかあさん」にはいろんな意味があるのですね。
初めて「おかあさん」を辞書でひいてみました。
「おかあさん」には、以下の5つの意味があります。
「おかあさん」の5つの意味。
1)子供が母親を呼ぶ時に用いる言葉。「母」をていねいにいう語。「おかあさん、ただ今」
2)子のいる家庭で、夫が妻に呼びかける語。「妻」をさしていう語。「かあさん、そろそろ出かけようか」
3)母親の立場にある人を客観的にいう語。母親が自分のことをいう場合にも用いる。「おかあさんは、もう知りませんよ」
4)相手や第三者の母親を、軽く敬っていう語。 「おかあさんによろしくお伝えください」
5)芸妓などが、女将(おかみ)を敬って呼ぶ語。「おかあさん、今日は休ませてもらいます」
「おかあさん」は「無償の愛」の象徴である。
ここで私の母親に関するエピソードをご紹介させていただきます。
思えば、私も母親のことを「おかあさん」と呼んでおりました。上の1番目の意味ですね。
世の中にある人間関係のほとんどは、利害が絡んでいると思います。
人と付き合う時、多くの場合、見返りを期待してしまうものです。
いわゆる「損得勘定」は、人間関係にはつきものだといえるかもしれません。
では、私の母親が私に注いでくれた愛情はどうかというと、ただ「与えるだけの愛」です。
それを「無償の愛」と呼んでも良いでしょう。
そもそも、母親は子供に対して何かをする時に、報酬とか、見返りとかを期待していません。
では、私の母親の「無償の愛」を示すエピソードをご紹介しましょう。
「おかあさん」の笑顔の意味
私は33歳の時に大病をしました。肝臓病で入院し、いったん退院したものの再発。
直後に、交通事故、親友の死、仕事上では機密文書を盗まれるなど、災難続きで、とうとう倒れてしまいました。
当時、自分の名前すら書けないほどに憔悴しきった私は、生まれ故郷の浜松で静養することになったのです。
その時、私を看病してくれたのが、母親です。
後で知ったのですが、私が帰郷する直前まで、母親は寝たきり状態でした。
それがどうしたことか、私が変わり果てた姿で帰ったその日から、バッと起きだし、献身的に動き回ってくれたのです。
そして、半年後、私が回復して、再び浜松を出ることになります。
出発する時、母親は笑って、ちぎれんばかりに手を振ってくれました。あの笑顔を、私は一生、忘れません。
あの母親の笑顔を忘れた時、本当の私ではなくなってしまう、とさえ思う時があります。
実は、元気な母親の姿を見たのは、それが最後でした。
私が家を出た、その日に母親は再び倒れ、寝たきりになってしまったのです。
これは奇跡のような事件ですが、その奇跡を起こしたのは、母親の無心の愛、それ以外の何ものでもありません。
ちぎれんばかりに手を振ってくれた、あの時の笑顔の意味を、今なら静かに語れる気がしています。
「おかあさん」という言葉は、なぜ美しいのか?
「おかあさん」という言葉には、現実の利害関係を超えた、無心の愛が感じられる、だから、ホッとできるという精神的な意味があることは、これまで述べたとおりです。
一方、音韻的に、純粋に言葉としても美しいのです。
母親の呼び方には、いろいろあります。
おかあさん、かあさん、おかあちゃん、かあちゃん、おかん、おふくろ、ママ、母上、お母様、などなど……。
母親の呼び方は様々ですが、日本語として、言葉として、音韻的にも、「おかあさん」が、圧倒的に美しいと私は感じます。
ほのぼの、まろやか、まるみ、やわらかさ、やわらぎ。あたたかさ、ぬくもり……そうした良い感じがすべて「おかあさん」という言葉には含まれているのです。
以上の理由から、「おかあさん」は「日本一美しい言葉」であると、主張したいと思います。