ロバート・デニーロ主演「ミッドナイト・ラン」と「恋におちて」を見た感想

ロバート・デニーロという俳優は個人的にそれほど好きではなかったのです。名優だということは認めるけれども、好みではないというか……。

 

それが、去年の暮れから今年にかけて、ロバート・デニーロが主演した映画を2作鑑賞して「これが本当に凄い役者なんだ」と思い至ってのです。

 

はじめに見たのが「恋におちて」。監督はウール・グロスバード。

 

メリル・ストリープとロバート・デニーロが出逢い、惹かれあってゆく過程が、わかりやすく、微細に描かれていて、すぐに感情移入できました。

 

ロバート・デニーロの自らの心理を表現する技術の高さに舌を巻きました。本当に「恋する中年」になり気っていましたよ。

 

中年同士にも、純愛はありうるのだということを、鮮やかに演じてみせてくれている。純朴とも感じられる、こういう恋愛の形もあるのだと、映画の魅力をしみじみと味わえました。

 

次は「ミッドナイト・ラン」。監督はマーティン・ブレスト。

ドタバタ・アクションですが、内容は濃密です。バディ(相棒)ものと言われるジャンル。

 

2人がいろんな状況をくぐりぬけながら、最後は意外な結末をむかえるという心理劇なのですね。葛藤劇とも言えます。

 

ロバート・デニーロの表情があまりにも豊か過ぎる。変化に富み、人間の顔の表情はこれほどバリエーションがあるのか、と驚かされるほどです。

 

先を読ませない展開も素晴らしい。シナリオが練られていて、途中、中だるみする時が一瞬たりともありませんでした。

深田恭子と金城武が共演したドラマ「神様、もう少しだけ」を見た感想

人はかけがえのないものを失うと知った時、初めて自分がしなければいけないことに気づく、そういうことはあるものです。

 

そんなことを教えてくれる、日本の隠れ名作ドラマがあります。

 

主人公がナレーションで語る、その詩のような言葉の連なりが良いのです。

 

このナレーションで、一気にハマってしましました。

 

その隠れ名作ドラマは「神様、もう少しだけ」。

 

神様、もう少しだけ

 

1998年の7~9月までフジテレビで放送されました。平均視聴率22.6%、最終回視聴率28.3%を記録。

 

主演は金城武と、このドラマでデビューした深田恭子。まだ初々しさ残る、ブレイク前の仲間由紀恵、その怖いほどの美しさも印象的です。また、今は亡き田中好子が、深田恭子の母親役を熱演。

 

恋人(深田恭子)が病の発症を知った主人公(金城武)が語るナレーションに痺れました。

この語りにより、ラストシーンまでの準備がかたまり、物語は加速し、感動はいやがうえにも高まってゆくのです。

 

以下が、そのナレーション。

 

人はなぜ手遅れになってからでないと気づかないのか、

人生の時計が神様の手で巻かれていると。

 

俺には今、光が見える。

闇にまたたく小さな光だ。

 

どうか、この光を守ってください。

見ていない間(ま)に、吹き消さないでください。

 

俺の命と引き換えでもかまわない。

神様、もう少しだけ。

 

長澤まさみ主演「ラスト・フレンズ」でも注目された浅野妙子さんですが、この「神様、もう少しだけ」も彼女が脚本を担当しています。

 

このシナリオライターは、ナレーションが上手いですね。

 

ダラダラと続く日常生活、それが突然、あと少しで終わってしまうと知ったら?

 

この状況はドラマだけでなく、現実にもよくあります。

 

自分が不治の病だと知った人が、急に濃密な人生を懸命に生き始めるというケースはよくあります。

 

自分が、あるいは愛する人が、あと数ヶ月しか生きられないとしたら~、そうした状況にご自分を当てはめてみると、見えてくるものがあるのですね。

 

ドラマ「神様、もう少しだけ」は、突っ込みどころも多々ありますが、テレビドラマとしての魅力も満載されており、一度ハマルと一気にラストまで見てしまうでしょう。

 

アマゾンでは多数のレビューが読めますが、28人のレビューアー中、ほぼ全員が最高点をつけているのには、ビックリしました。隠れ名作というより、正真正銘の名作と呼ぶべきでしょうか。

 

この作品は、DVDボックスを買いました。

 

一時、発売停止になり、焦って予約したら、再販売になったのです。

 

こういうDVDは、リクエストが多く集まると再販になるとのこと。何事も、諦めてはいけませんね。

映画「心の旅路」を見た感想

心の旅路」という映画をご存じでしょうか。私自身、偶然「dTV」で見つけて鑑賞したのですが、これはかなり良い映画だと感じたので、感想を書くことにしました。

 

心の旅路」は1942年のアメリカ映画。監督はマーヴィン・ルロイ。主演男優はロナルド・コールマン。主演女優はグリア・ガースン

 

特筆すべきは、グリア・ガースンの美しさと演技力です。作品全体のトーンを決定してしまうほどの美しさでした。

 

ストーリーの特徴は、記憶喪失が扱われていること。展開に多少の無理はありますが、白けるような嘘っぽさはなく、充分に楽しめました。

 

主要登場人物の環境や地位が激変し、その大きな変化の中で「本当の自分(失われた最愛の人との暮らしに関わる記憶)を取り戻す旅」を続ける。そこに何ともいえない切なさがあり、愛に苦しめば苦しむほど、グリア・ガースンは美しくなるのでした。

 

この時代の映画は、特撮技術はありませんから、役者さんの演技力で映画の魅力が決定されてしまうのですね。

 

特に、この「心の旅路」のような心理劇では、微細な演技力を堪能できます。

 

シンプルだけれでも、作品自体をていねに、深く、精細に鑑賞できるのです。

 

古い映画は相当に見ているつもりでしたが、こういう名作もあるのですね。ということは、まだまだ映画を見る楽しみがあるということで、嬉しい気持ちになれました。

 

グリア・ガースンの主演している映画を、またぜひ見てみたいものです。