ロバート・デニーロという俳優は個人的にそれほど好きではなかったのです。名優だということは認めるけれども、好みではないというか……。
それが、去年の暮れから今年にかけて、ロバート・デニーロが主演した映画を2作鑑賞して「これが本当に凄い役者なんだ」と思い至ってのです。
はじめに見たのが「恋におちて」。監督はウール・グロスバード。
メリル・ストリープとロバート・デニーロが出逢い、惹かれあってゆく過程が、わかりやすく、微細に描かれていて、すぐに感情移入できました。
ロバート・デニーロの自らの心理を表現する技術の高さに舌を巻きました。本当に「恋する中年」になり気っていましたよ。
中年同士にも、純愛はありうるのだということを、鮮やかに演じてみせてくれている。純朴とも感じられる、こういう恋愛の形もあるのだと、映画の魅力をしみじみと味わえました。
次は「ミッドナイト・ラン」。監督はマーティン・ブレスト。
ドタバタ・アクションですが、内容は濃密です。バディ(相棒)ものと言われるジャンル。
2人がいろんな状況をくぐりぬけながら、最後は意外な結末をむかえるという心理劇なのですね。葛藤劇とも言えます。
ロバート・デニーロの表情があまりにも豊か過ぎる。変化に富み、人間の顔の表情はこれほどバリエーションがあるのか、と驚かされるほどです。
先を読ませない展開も素晴らしい。シナリオが練られていて、途中、中だるみする時が一瞬たりともありませんでした。