金子みすゞの「四月」という詩をご紹介します。
四月
新しいご本、
新しいかばんに。
新しい葉っぱ、
新しいえだに。
新しいお日さま、
新しい空に。
新しい四月、
うれしい四月。
いいなぁ、この詩。
こういう気持ちを、取り戻したいですね。
以下は、倒置法ですね。
新しいご本、
新しいかばんに。
もしも、以下のように書いたらどうでしょうか。
新しいかばんに。
新しいご本、
清新さが、やや弱まりますよね。やはり、倒置法によって「新しいご本」を先に言って強調する方が、インパクトがあるし、ときめきの度合いが高まります。
3回、倒置法で「ご本」「葉っぱ」「お日さま」を鮮明に打ち出し、そして最後の連で……
新しい四月、
うれしい四月。
倒置法を使わないこで、リズムが変り、この変化が効いていますよね。
「うれしい四月」の最終行は、感動的なほど輝いている。さりげなく書いているようですが、技法が巧みです。
以前に私は金子みすゞの「さよなら」という詩のレビューで「金子みすゞは技巧オタクだ」と書きましたが、この「四月」くらいのテクニックは、朝飯前だったんですね。