今回は映画「終身犯」をご紹介。原題は「Birdman of Alcatraz」。アルカトラズ刑務所の鳥男、である。映画を最後まで見れば、この原題の意味をご理解いただける。

 

「終身犯」は1962年に制作されたアメリカ映画。

 

主演はバート・ランカスター。監督はジョン・フランケンハイマー

 

終身犯のバート・ランカスター

 

この映画こそ、隠れ名作という言葉がふさわしい。

 

正直、ほとんどの人がご存じないのではないか。無名の映画だが、傑作中の傑作と評価したくなる深さを備えた心理映画だ。

 

二人の人間を殺害した男が、一羽のスズメと触れ合うことで、心の中の優しさが目を覚まし、この映画を鑑賞する者は、次から次への驚異的な出来事に、ときめき続けることになる。

 

私たち一般人は、シャバ(現実社会)で、自由な生活を謳歌できるわけでなく、日々息苦しさにあえぎながら生活している。

 

実人生は、まるで、籠の中の鳥のように不自由である。

 

それに反し、この映画の主人公であり、実在の人物でもある、ロバート・フランクリン・ストラウドは、独房暮らしであるにもかかわらず、粘り強い学習と創意工夫、羽ばたく鳥のように自由な想像力によって、獄中で鳥類の研究を続け、やがて鳥類学の権威となってしまう。

 

そのため、現実社会で絶望的になっている者も、例えば私自身、この「終身犯」を見ると、人生の深い示唆と勇気と希望が得られるのだ。

 

主演のバート・ランカスターの存在があまりにも大きい。彼以外では、この映画は成立しない、と思うほどだ。

 

人間の心理をきめ細かく表現する、いわゆる「性格俳優」としての卓越した才能を、バート・ランカスターはいかんなく発揮している。

 

バート・ランカスターの演じた心理劇映画としては「愛しのシバよ帰れ」も佳作である。

 

「愛しのシバよ帰れ」のレビュー記事はこちら

 

刑務所の中という限定された空間だからこそ、人間の心理の深奥までを映し出せたのだと思う。

 

刑務所の中にこそ自由はあり、現実社会こそが鳥籠のような独房なのだ。

 

最後に日本語吹き替えのレベルの高さに触れておく。

 

この日本語吹き替えは、それ自体が芸術である。熟練の技量が、いぶし銀のように輝いている。