「愛しのシバよ帰れ」という映画をご存じでしょうか。私は今回初めて見たのですが、終わってから、感動が押し寄せてくる、稀有な傑作です。
「愛しのシバよ帰れ」は1952年に制作され、1953年に公開されたアメリカ映画。ウィリアム・インジの舞台劇を映画化。監督は舞台の演出を担当した、ダニエル・マン。
主演は舞台でも主演を演じたシャリー・ブース。本作品「愛しのシバよ帰れ」で、アカデミー主演女優賞を受賞。
シャリー・ブースの夫役を演じた、バート・ランカスターは繊細で抑制された表現力も見ごたえあり。
特に絶賛すべきは、主演女優のシャリー・ブースの演技。
舞台劇の映画化と知って納得しました。
主なエピソードはすべて過去のことであり、回想によって語られます。過去の映像はいっさい出てこず、視聴者は二人の過去を想像するしかありません。
映画というより、ほとんど室内劇といっていいほど、場面は切り替わりません。
それでも、これほどまでに視聴者を唸らせるほどの感動を与えてくれる、「愛しのシバよ帰れ」は、極めて貴重な心理劇だと言えるでしょう。
とにかく、玄人受けする映画です。
シャリー・ブースの細部にまで神が宿る演技は、天才的でさえあります。熟達した表現力に裏打ちされた、魂の演技はいくら賞賛しても足りないくらいです。