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映画「愛しのシバよ帰れ」は心理劇の傑作。シャリー・ブースの演技は圧巻。

愛しのシバよ帰れ」という映画をご存じでしょうか。私は今回初めて見たのですが、終わってから、感動が押し寄せてくる、稀有な傑作です。

 

「愛しのシバよ帰れ」は1952年に制作され、1953年に公開されたアメリカ映画。ウィリアム・インジの舞台劇を映画化。監督は舞台の演出を担当した、ダニエル・マン。

 

 

主演は舞台でも主演を演じたシャリー・ブース。本作品「愛しのシバよ帰れ」で、アカデミー主演女優賞を受賞。

 

シャリー・ブースの夫役を演じた、バート・ランカスターは繊細で抑制された表現力も見ごたえあり。

 

特に絶賛すべきは、主演女優のシャリー・ブースの演技。

 

舞台劇の映画化と知って納得しました。

 

主なエピソードはすべて過去のことであり、回想によって語られます。過去の映像はいっさい出てこず、視聴者は二人の過去を想像するしかありません。

 

映画というより、ほとんど室内劇といっていいほど、場面は切り替わりません。

 

それでも、これほどまでに視聴者を唸らせるほどの感動を与えてくれる、「愛しのシバよ帰れ」は、極めて貴重な心理劇だと言えるでしょう。

 

とにかく、玄人受けする映画です。

 

シャリー・ブースの細部にまで神が宿る演技は、天才的でさえあります。熟達した表現力に裏打ちされた、魂の演技はいくら賞賛しても足りないくらいです。

 

映画「ミニヴァー夫人」は「戦意高揚映画」ではなく、心温まるホームドラマである。

アメリカの名匠であるウィリアム・ワイラー監督の映画「ミニヴァー夫人」を鑑賞した。

 

ミニヴァー夫人

 

感想を書くために、データを集めていたら、この「ミニヴァー夫人」を「戦意高揚映画」とか「プロパガンダ映画」と説明している文章がいくつかあって、実に嘆かわしい。

 

最初に断言しておくが、「ミニヴァー夫人」は「戦意高揚映画」でも「プロパガンダ映画」でもない。

 

この「ミニヴァー夫人」は、1942年に制作されており、第二次世界大戦の真っ最中である。

 

第二次世界大戦は、1939年から1945年までの6年間、ドイツ、日本、イタリアの日独伊三国同盟を中心とする枢軸国陣営と、イギリス、ソビエト連邦、オランダ、フランス、アメリカ、中華民国などの連合国陣営との間で戦われた全世界的規模の戦争。

 

戦時中に作られた戦争映画には、確かに国威発揚の狙いで制作された映画は多数ある。

 

しかし、「ミニヴァー夫人」は戦時下という厳しい制約の中で、見事に描出されたヒューマンドラマである。

 

戦意高揚映画というより、反戦映画という性質の方が強いが、やはり、人間ドラマと呼ぶできだろう。 この記事の続きを読む

「我等の生涯の最良の年」は、ウィリアム・ワイラー監督の最高傑作。

映画「我等の生涯の最良の年」を見終わってから、作品の時間を見てビックリした。

 

2時間49分。信じられない。もっと短く感じた。長さがまったく苦にならない映画である。

 

「我等の生涯の最良の年」の原題は「The Best Years of Our Lives」。1946年に製作、公開されたアメリカ合衆国の映画である。監督はアメリカ映画界を代表する名匠である、ウィリアム・ワイラー

 

 

ウィリアム・ワイラー監督の代表作は「嵐ヶ丘」「ローマの休日」「ベン・ハー」「コレクター」など。

 

「我等の生涯の最良の年」を見るのは初めてだが、ちゅうちょなく、ウィリアム・ワイラー監督の最高傑作だと断言したいと思った。

 

その証拠となるかは別として、当時のアカデミー賞最多記録となる9部門を受賞している。

 

映画が人にとって「希望」であった時代の名作。

 

この「我等の生涯の最良の年」で忘れてならないのは、1946年に制作されたということ。

 

つまり、第二次世界大戦が終わった次の年に作られたのである。

 

戦勝国であるアメリカも、さすがに戦闘の爪痕が、人々の暮らしに濃い影を落としている。

 

悲惨な戦争を引きずりながらも、復員し、日常生活に戻ってゆく3人の帰還兵の様子を、温かな視点から鮮明に描きだしている。

 

厳しい現実をリアルに描いた映画ではなく、戦争で傷ついた人たちを励ます、ヒューマンドラマとして作成された映画です。

 

このハートウォーミングな物語が、戦後、多くの人たちに希望を与えた映画であったろうことは、想像に難くない。

 

実際に、トーキーになってからの映画の興行成績としても「風と共に去りぬ」以来の第2位を記録している。

 

男女7人の描いた群像劇であり、一流の心理劇でもある。

 

では、何ゆえに、私はこの「我等の生涯の最良の年」を、ウィリアム・ワイラー監督の最高傑作と評価したのだろうか。

 

まずあげるべきは、男女7人が織りなす群像劇を見事に描き切っていること。

 

誰が主役なのかわからないほど、7人それぞれが生き生きと描かれてる。

 

この手法は、日本のドラマにも応用されているようだ。

 

「金曜日の妻たちへ」「男女7人恋物語」などは、「我等の生涯の最良の年」を娯楽作品として描いたのではないかと想像してくなる。

 

優れた群像劇であると同時に、もう一つ要素も指摘したい。

 

それは、心理劇としても見ごたえ充分だということ。

 

それは、ドラマを鑑賞する時の最大の醍醐味である、登場人物の心の変化である。

 

映画が始まった直後とラストでは、それぞれの人物がまるで違っている。心理の襞を繊細に、かといって繊細になりすぎず、鮮やかに、品格も持って描いている手腕は並大抵のものではない。

 

その意味で「我等の生涯の最良の年」は、心理劇の秀作とも言える。

 

同じく、ウィリアム・ワイラー監督の映画に「ミニヴァー夫人」があるが、これは戦時下の物語。

 

「我等の生涯の最良の年」と比較すると興味深いだろう。

 

⇒映画「ミニヴァー夫人」のレビュー記事はこちらに

 

テレサ・ライトの上品な美しさと笑顔が印象的。

 

役者たちの演技は、それぞれが際立っているが、その中でも、ダナ・アンドリュースと恋に落ちる、テレサ・ライトの美しさだ。

 

とてつもない美人ではないが、さりげなく滲み出る精神的な気品、そして陰影に富んだ表情の豊かさは、第一級の女優と評すべきだろう。