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最近、「耳ざわりがいい」、あるいは「耳ざわりのいい」という言葉をよく耳にします。
この「耳ざわりがいい」を「耳障りがいい」と書いたら誤りで「耳触りがいい」と書くべきです。
「耳障り」は「聞いていて不愉快に感じること、聞いていて不愉快に思う物事」を意味し、「耳触り」は「聞いた感じ、聞いた時に受ける印象」などを意味するから。
「耳触り」と同じ意味の言葉に「耳当たり」があるのです。しかし、「~当たり」という表現では「口当たりがいい」の方をひんぱんに使います。
三省堂の大辞林は「口当たり」という言葉の意味を以下のように説明しています。
くちあたり【口当(た)り】
食べ物や飲み物を口に入れたときの感じ。舌ざわり。
確かに「耳当たりがいい」というよりも「耳触りがいい」といった方がしゃべりやすいし、意味もわかりやすいですね。
これでは、さまざまな辞書が「耳触り」という言葉を掲載しだしたのも当然かもしれません。
しかしながら、「耳触りがいい」「耳触りのいい」という表現には違和感を覚える人も多いでしょうね。
Weblio類語辞書は「耳ざわりのいい」の類義語を以下のようにあげています。
「耳ざわりのいい」の類義語
耳触りのいい ・ 耳ざわりのいい ・ 耳に心地いい ・ 聞こえのいい ・ 聞こえの良い ・ 聞こえが良い ・ 聞こえがいい ・ 耳触りのよい ・ 耳ざわりのよい ・ お為ごかしの ・ 尤もらしい
上の中では「聞こえのいい」「聞こえがいい」、あるいは「耳に心地いい」が使いやすいと私は感じました。
でも、上には出てこないのですが、個人的には「聞いた感じがいい」とストレートに表現した方がわかりやすいと思うのですが、いかがでしょうか。
「寝心地がいい」という表現がありますが、それならば「聞き心地がいい」という言い方も許されるかもと思ったので、付け加えておきますね。
「~心地」でよく使われる表現は、以下のとおりです。
寝心地 居心地 着心地 座り心地 乗り心地
「聞き心地」は私が使っている辞書には載っていませんでした。Webで検索しますとヒットするのですが……。
「手触り」や「肌触り」の「触り」は、その文字が示す通り、五感のうちの「触覚」に関するものあり、「手」や「肌」も「触覚」に関するものです。
一方、「耳触り」というのは、「触覚」に関する「触り」を「聴覚」に関する「耳」に付けたものになります。
このため、「耳触り」という文字を見た場合には、脳は「?」となってしまいますし、また、音(音声)として聞いた場合には「耳障り」と理解されるため、その後に「いい」が続くと脳は混乱してしまいます。
この辺が違和感の原因です。
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なお、「舌触り」は、舌の「味覚」に関する表現ではなく、舌の「触覚」に関する表現であるため、問題はありません。
つまり、耳で何かを触った時の感触、つまり耳の「触覚」について述べるのであれば「耳触り」と表現しても問題はないのですが、耳で聞いた時の感触、つまり耳の「聴覚」について述べるので問題になるのです。
(まあ、もっとも、自らすすんで耳で何かを触るという行為自体、普通はありえませんが。笑)
単純に、「耳あたり」と言えばいいんでしょ、問題解決! と思っていましたし、そのように実践してきました。上の説明だと「耳あたり」の何がいけないのか分かりませんでした。
「触り」「障り」という書き分けは文字では可能ですが、話し言葉では無理なので、「耳ざわりがよい」がおかしく聞こえるのは避けようがありません。「耳障りだ」という表現が廃れてしまえば別でしょうが。
聞こえがいい に一票
「聞き心地」は100歩譲ってまだ良いとしても、「聴き心地」も無かったのなら可笑しな辞書ですね。
音楽の聴き心地が良いってのは昔から使われている表現のはずですが。