池田ソメさんの「うめぼし」というを「広島詩集」より、ご紹介します。

 

うめぼし

 

そりゃ あの時や ナンデガンスヨ

茶の間のガラス戸棚といっしょに

ころげたんでガンス

ガラガラ ガラガラ揺れる拍子に

屋根の上へ ずり出たんでガンス

ずりでる言うても 出られぁしまへんけ

出して貰うたんですよね まあ

神さんか仏さんかに

 

やれ難儀ややれ痛や

早う息が切れりゃ

参らせてもらえるんじゃに と

梅干を口に入れて貰うたんは

三日目の朝でガンシタ

「この婆さんは 死んでしもうたか

かわいそうに

南無アミダ 南無アミダ」

と わしの顔を撫でんさった

「生きとる 生きとる」言うたら

大きな梅干を

わしの口へ 呉れんさった

 

梅干言うもんは ええもんでガンス

その梅干のおかげでガンシタ

わしは 元気が出ましてなあ

 

「広島詩集」は、1965年7月15日に刊行された。広島詩人協会が広く作品を募り、その応募作で編まれたのが「広島詩集」である。

 

小学生から90歳の老人に至るまで、幅広い層から「被爆体験」をテーマにした詩作品が寄せられた。

 

今回ご紹介した、池田ソメさんが、その90歳の老人である。

 

それにしても「うめぼし」という詩の明るさには、驚嘆せざるをえない。

 

何という明るさだろう!

 

数々のいわゆる原爆詩を読んできたが、池田ソメさんのような生命力あふれる大らかな詩は他には知らない。

 

このリズミカルなおしゃべりが、とびっきりの明朗と明日への希望を感じさせてくれる。

 

こういう詩を後世に伝えてくれた「広島詩集」を発行された、広島詩人協会さんに心より感謝を申し上げたい。

 

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